チェーンストアが主流でなかった昭和の時代でも、外食産業は厳しい仕事であった。徒弟制度下での長時間労働など過酷な環境は昔から存在したが、外食人としてのキャリアアップや独立といった将来展望が描けるなら、その「厳しさ」には意味があっただろう。
しかし、チェーン店スタッフとして、ただマニュアル作業をこなすだけで、汎用的なキャリアにつながらないのであれば、長期的な貢献に対するリターンが少なすぎて職場の定着率が上がるはずもない。人間には、貢献に応じたキャリアアップが得られる仕事を与えられるべきだ。
外食に限らず、現代はこうしたマニュアル労働的な仕事にあふれている。短期バイトや一時的な副業としてはありがたい存在だが、これを長期間続けると、心の病の原因にもなりうる。
近年、うつ病など心の病の患者数は急速に増えているという(図表2)。これが労働環境と直接の因果関係にあるかどうかは不明だが、現在のサラリーマン社会において、世の中の仕事の多くが「やらされ仕事」であるため、そのストレスに耐えられない人が増えてきたのではないかと、個人的には感じている。
産業革命以降、雇われ仕事は存在し続けているが、やらされ仕事に従事する割合は現在がピークなのではないか。
就業者に占める雇用者(サラリーマン)の比率は、1953年には42%だったものが、2000年代以降は85%、2024年時点では9割を超えているという。就業者のほとんどが雇用者であるが、これは向かない人もかなり多いはずだ。私自身が30年ほどサラリーマンとして働いてきた経験と、周囲を見渡しても、そう実感している。今こそ、テクノロジーの進展が「やらされ仕事」を少しでも減らしてくれることを願うばかりである。
【お詫びと訂正:6月2日午前8時の初出で、本文の一部事実に誤りがありました。6月2日午前10時42分、該当箇所を修正いたしました。お詫びして訂正いたします。】
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