最近日本では、経済安全保障への対策意識が高まっているが、そんな時代だからこそ、企業は自分の身を自分で守る体制を構築することが重要だ。さもないと、下手すれば水面下でリスクが進行してビジネスの根幹が揺らぎ、死活問題になる。
実際に冒頭で述べたように、ここ数年だけを見ても、知的財産を盗まれるケースは多い。報道などで表沙汰になったトラブルは氷山の一角で、今この瞬間も、外国勢からターゲットにされている日本企業は少なくないだろう。クロールはそうした企業活動に潜むリスクを洗い出していく。
例えば、企業人事に関する調査依頼も引き受けているという。通常の雇用プロセスにおける身元調査に始まり、社外取締役を据える場合に候補者の素性を調べる依頼も少なくない。表に出ている経歴では分からない人物評を探っていくのだ。過去に起こした問題やこれまでの職場での評判まで拾い上げる。
加えて、日本のビジネス界では反社会的勢力との付き合いはご法度だ。ビジネスの相手や雇用者が、反社会的勢力と付き合いがある可能性もある。「外部から雇おうとしていた重要幹部候補が、表向きは問題ない人材なのに、実は歓迎できないような人たちと深い付き合いがあったというケースも実際にあります」(山﨑氏)
また、日本企業が海外に進出する場合のリスク対策も実施している。山﨑氏は「日本企業が海外現地法人を作る際にも、現地採用する幹部たちすべての経歴や素性を洗い出します」と言う。
さらに、世界のネットワークを通じて、地政学的な分析も行っている。デジタル機器を解析するデジタルフォレンジック調査も実施し、それをヒューミントに取り込んで調査するという。
最近、フジテレビにおいて、タレントの中居正広氏を巡って大変な騒動になったが、そういったトラブルが表面化した企業の内部調査や周辺調査も行うという。フジテレビのケースでも、クロールが調査したならば、関与した人物の素性や評判の情報を独自のルートで集め、会社の体質を深く調べた可能性がある。第三者委員会のような動きをすることもあるという。
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