伊藤さんは、外貨を稼ぐという経験を通じて、働き方や将来のキャリア観が大きく変わったと語る。
「最初は『本当に外貨で数十万円も稼げるの?』『詐欺だったらどうしよう……』と不安もありました。でも、実際に始めてみると、少しずつ成果が出て、自分にもできるんだという自信に変わっていきました」
こうした挑戦を重ねる中で芽生えたのが、「国境のない働き方」という感覚だ。特に大きかったのは、自分自身の価値に対する認識の変化だという。
「自分ができる仕事を、世界の誰かが必要としてくれる。それって、自分という商品を“輸出”している感覚に近いと思います。自分がどれだけ世界で通用するのかを実際に試せたことで、大きな自信にもなりました」
仕事を通じて培ったスキルも多い。日本語を教える際に齟齬(そご)が生まれないように英語で補足する力や、瞬発的な返答力。大学でファシリテーターをしていた経験も生かされ、生徒の意図をきちんとくみ取り、自然に会話を広げていくスキルも磨かれた。
これらの経験は、キャリアに対する考え方そのものを変えていった。 「以前は『どの企業に入るか』と考えていましたが、今は『自分がどこに価値を生み出せるか』という考え方に変わりました。インターネットやAIが当たり前で、世界中にクライアントがいる環境で働いたことで、自然と視野が広がりました」
さらに、海外のクライアントに頼りにされることで得られた自己肯定感も大きい。こうした経験により、以前はICT教育やIoTなどのテクノロジー分野に関心があったものの、人と接したり、人の魅力を引き出すことに興味を持つようになったという。“人事”領域に関心を持ちつつも、外貨を稼ぐ仕事や今後の米国留学を通じて、さらに自分の興味は何なのかを深掘りしていきたいと話す。
長引く円安という現実の中でも、学生のうちから海外とつながる働き方を選ぶことで、キャリアに対する認識が大きく変わりそうだ。伊藤さんのように、自分の得意分野を生かして外貨を稼ぐ「越境バイト」は、これからの時代、新しい働き方の選択肢として、静かに広がり始めている。
フリーランスの記者・編集者として、多様な生き方・働き方を紹介する記事の執筆、企業の導入事例や採用広報記事の作成、記事作成のコンサルティングなどを行う。海外企業の業務も受託し、リモートワークで外貨を獲得する仕事もしている。
国内外を転々としながらリモートワークするデジタルノマド生活を送る。約70の国と地域に渡航し、世界各地の辛い料理を食べることと魚市場めぐりが趣味。
1987年生まれ、山梨県出身。東京外国語大学卒業、東京大学大学院修了。読売新聞編集記者、在重慶日本国総領事館専門調査員、日本航空業務企画職(総合職)、oVice広報を経て現在に至る。
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