今や対面決済の半分が「タッチ」に――iD・QUICPayが撤退し、Visaが独走するワケ(3/5 ページ)

» 2025年06月17日 08時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

相次ぐiD/QUICPay撤退の連鎖

 他方、タッチ決済の勢いとは対照的に、日本独自の非接触決済技術は苦境に立たされている。

 iDはNTTドコモが運営し、260万台以上の決済端末に対応する巨大なエコシステムを築き上げていた。QUICPayはJCBが展開し、全国300万カ所以上の場所で利用できる。いずれも日本で開発されたFeliCa技術を基盤とし、Suicaと並び国内で広く普及してきた非接触決済方式だ。

 多くのプラスチックカードで標準装備され、モバイル決済でも主流だった。2021年5月にiPhoneでタッチ決済が使えるようになるまで、カードを登録するとiDやQUICPayがセットされる仕組みが当たり前だったのだ。

 その牙城が今、崩れつつある。冒頭でも触れたように、プラスチックカードでのQUICPay終了が続く。アプラスは2024年7月31日でサービスを終了。ファンケル提携のJCBカード、クレディセゾン系の日専連カードも2025年前半での廃止を決めた。ゆうちょ銀行は7月から新規カードでiDの搭載を終了する。

 衝撃的だったのは三井住友カードの決断だ。同社は2025年7月以降、新規発行・更新カードからiD機能を順次削除する。カード業界大手の判断は、業界全体の方向性を決定づけた。三井住友カード広報部は「お客さまの決済方法がスマホ決済に移行する傾向を受けた」と説明するが、iD搭載を止める一方で全カードをタッチ決済に対応させており、タッチ決済推しの姿勢が推察される

 iDの運営元であるNTTドコモは「引き続きニーズは高い」と反発するものの、新機能発表が1年以上途絶えるなど、サービス拡大の兆しは見えない。そもそもドコモが発行するdカードは、これまで券面に「iDマーク」を付けてiDが使えることをアピールしてきた。ところが、2024年11月に登場した「dカード PLATINUM」、2025年2月に登場した「dカード GOLD U」では、タッチ決済マークは付いているもののiDマークは消えた。

NTTドコモのdカードは現在もiD機能を継続搭載している。ただし最新カードからは券面の「iD」マークがついに消えてしまった

 決済アプリ分野でも、KyashがQUICPayを完全終了してVisaタッチ決済に一本化するなど、代替への移行が鮮明になっている。

Kyashは2025年6月2日にQUICPay+の新規申込を停止し、8月31日には既存ユーザーの利用も完全終了すると発表。同社は「より便利で統一されたキャッシュレス体験を提供するため、Visaブランドへのサービス一本化を進めている」と説明している

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