ただし、SBIが手を引いたからといって、勝機がないと見るのは早計だ。
ドコモはこれまで、d払いやdカードを通じて決済と与信に踏み込んできたが、銀行機能の欠如がネックとなっていた。
ドコモの狙いは、遅れた銀行参入の穴埋めではない。むしろ、「通信・金融・生活」の統合によるdポイント経済圏の完成を目指している。
今後は、dポイントと銀行取引を直接結びつけることで、楽天が展開する「楽天経済圏」などに対抗するだけでなく、金融機能を通じて顧客の可処分時間の囲い込みを加速させる可能性が高い。
例えば、住宅ローンを組めばdポイントを還元、給与口座指定でd払いチャージ、家計簿アプリでドコモ保険と連動――。こうした「生活に組み込まれた金融体験」は、ライバルもシェア争いの途上にあり、ドコモにも競争余地が残されている分野である。
モバイル会員基盤やdポイントが利用可能な全国の小売店というリアルな接点を駆使すれば、「銀行口座のメインバンク化」も現実味を帯びてくる。
そして今後は、給与口座・住宅ローン・決済をdポイントと絡めて展開し、楽天のような「金融エコシステム」を構築する道も見えてくる。
さらに、NTTグループ全体での展開も見逃せない。NTTグループはドコモを完全子会社化した後、NTTデータグループを買収するなど「大きな組織」に回帰しつつある。グループ全体でのシナジーを考えると、マイナンバーをはじめとしたデジタルIDや地方自治体との連携、スマート医療、教育ICTといった高度な社会インフラ事業との統合とも絡んだ展開も期待できそうだ。
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