従業員の生成AI利用率90%超のリアル! いちばんやさしい生成AIのはじめかた
【開催期間】2025年7月9日(水)〜8月6日(水)
【視聴】無料
【視聴方法】こちらより事前登録
【概要】ディップでは、小さく生成AI導入を開始。今では全従業員のうち、月間90%超が利用する月もあるほどに浸透、新たに「AIエージェント」事業も立ち上げました。自社の実体験をもとに、“しくじりポイント”も交えながら「生成AIのいちばんやさしいはじめ方」を紹介します。
先端医療の実用化に不可欠な創薬と再生治療の二刀流で、医療イノベーションを目指すのがスタートアップのケイファーマ(東京都港区)だ。ALS(筋萎縮性側索硬化症)、脊髄損傷、脳梗塞など中枢神経系疾患領域を中心に、医療ビジネスを展開しようとしている。
慶應義塾大学などの研究チームは3月、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った神経前駆細胞を、亜急性期脊髄損傷患者に世界で初めて移植する再生医療の臨床研究を完了。その成果を日本再生医療学会で発表した。この再生治療の承認申請を目指した治験を、ケイファーマは進めようとしている。
医療イノベーションの最先端について、福島弘明社長に聞いた。
福島弘明(ふくしま・こうめい)1988年エーザイに入社。2006年にエーザイボストン研究所に異動になりボストンに駐在。2014年にエーザイを退職。同年に慶應義塾大学医学部講師、翌年、特任准教授。2016年にケイファーマを設立して社長に就任。長崎県出身(アイティメディア撮影)福島社長は1988年、製薬会社のエーザイに研究者として入社した。主に抗がん剤やアルツハイマー病の薬の開発を手掛け、約22年、研究開発に従事したという。ただその間、治療薬はわずか数種類しかできなかった。
大手製薬会社は市場規模が大きい病気を対象にした治療薬しか開発しない傾向にある。福島社長はそれが気になっていた。長年「希少疾患に有効な薬剤を一つくらいは開発できないものか」と思っていたという。米国で医療産業が集中しているボストンにも駐在して研究した。だが帰国後に研究開発部門から離れ、人事部門に配属になったのだ。これが一つの転機となり、4年後に同社を退職したという。
例えば、アルツハイマー病では、日本に400万人も患者がいるといわれていて、大きな市場がある。一方、希少疾患は、数万人未満の患者しかいない疾患が多く、市場規模はどうしても小さい。そのため、治療薬や治療の開発は活発ではなかった。
福島社長は2000年ころ、慶応大学医学部の神経系疾患に詳しい岡野栄之教授と出会い、意気投合。iPS細胞を使った再生医療と創薬のトップランナーである岡野教授と、難治性の疾患治療薬の開発、脊髄損傷などの再生医療で連携した。2016年にケイファーマを創業してからも岡野教授と、主に希少疾患を対象にした治療薬開発や脊髄再生医療の社会実装に向け対応を続けている。
とはいえ自社で研究から開発まで、全てを手掛けるのは厳しい。そのため、治療が難しいALSの治療薬の開発では、薬卸売り大手アレフレッサホールディングスの関連会社アルフレッサファーマ(大阪市)と、国内開発に限定した開発契約を結んだ。これによって契約一時金が得られ(特定の成果や進捗状況を達成するごとに支払われる)マイルストーンペイメントや、ロイヤルティも期待できる。また、創薬をグローバルに広げていけば、さらに収入の道が広がるはずだ。
福島社長は現在のビジネスモデルについて「再生医療だけの一本足打法では、企業としてリスクが高い。創薬も入れた『二刀流』で経営することにしました」と説明する。
治療薬の開発、実用化には膨大な費用が必要になる。そのため福島社長は、起業した翌年に慶応大学出身のSBIホールディングス北尾吉孝会長兼社長(VCであるSBIインベストメント社長を兼任)に出資検討をお願いしたという。すると快諾を得て、SBIが主要株主の一社になった。北尾会長のテレビ番組「この国の行く末」に岡野教授が出演するなど、北尾会長自身、医療に対して造詣が深いのだ。
「おかげさまで、創業7年目の2023年、東京証券取引所グロ−ス市場に上場できました」
治療薬、再生治療の対象領域は、ALSや脊髄損傷だけでない。認知症や、欧米に患者が多いハンチントン病、脳梗塞、難聴などについても開発を進めている。「大手が開発をしているアルツハイマー病などの治療薬開発も視野に入れながら、アンメットメディカルニーズが満たされていない(現在の医療では十分な治療法が見つかっていない)希少疾患を中心に事業を進めていきたい」と話す。
「製薬企業には手が届かない切り口で、開発を進めていきたいと思います。最近は厚生労働省も希少疾患に対して配慮してくれるようにはなってきました。大学などとも積極的に連携していきたいと考えています」
2014年には、医薬品医療機器等法(薬機法)が改正された。再生医療や遺伝子医療による薬の治験承認は以前より進んではきている。だが福島社長によると、iPS細胞を活用した再生医療は、まだ実用化されたものはないという。
薬品メーカーが治療薬の承認を受けるまでには、治験などを繰り返し実施して薬の安全性や有効性を確認しなければならない。そのため膨大な開発費用が掛かる。治療薬単独で治験をすると費用が掛かりすぎるため、福島社長によると、例えば抗がん剤の開発では、従来の薬との相乗効果を狙った治験が増えているという。
厚労省は、かつて薬害問題などで批判されてきた。そのため治験の安全性の審査には、長年にわたり厳しい姿勢をとってきた経緯がある。いくら外国での治験結果が良くても、日本人による治験データを必要としてきたため、データを得るために時間がかかっていたのだ。結果、日本では治療薬の実用化が承認されるのに長期間を要し、欧米で認められた治療薬のうち6〜7割が日本では認められない「ドラッグ・ロス」が起きている。
治験参加者を増やすために福島社長は「(医薬品開発の初期段階で実施される)臨床第1/2相試験で得られた治療効果について、参加者に丁寧に説明するようにしていきます。長期的な治療効果が確認できる治験デザインも工夫していきたい」と話す。こうした工夫や努力によって治験参加者が増えるとみている。
治験の実施では、参加者を募集する際に、参加することへの負担を軽減する名目で負担軽減費を支払う場合がある。福島社長によると、治験参加者に対して負担軽減費を支払うかどうかは、ケースバイケースのようだ。患者のステージや治験の方法によっても違ってくる。
慶応大学が最近、ALSに効果のある候補薬の治験をした際には、慶応大学病院のWebサイトで参加者を募集した結果、1000人以上の申し込みがあったという。実際には、このうちの20人を対象に治験を実施した。福島社長は「次回の試験では参加者をもう少し増やして、データを積み上げ、承認申請を目指していきたい」としている。
患者にしてみれば、少しでも治療効果が期待できそうな薬ならば、参加してみたい気持ちがある。参加者の増加につなげたい構えだ。
治療薬の承認に時間がかかることから、例えば米国で認められた治療薬の日本での承認を待っていたら時間が経過してしまう。そのため、患者がどうしても治療薬を試したい場合には、医師が米国から治療薬を輸入することもあるという。そして患者が安全性に納得した上で、自費で輸入した治療薬で治療するケースもある。
しかし最近では、日本以外の国で治験したグローバルレベルの試験結果の一部を、日本でも取り入れようとする動きもみられる。例えば米国のFDA(米食品医薬品局)で認めたデータの一部を受け入れるようにもなってきているという。厚労省としては、治療薬の承認に対しては慎重な姿勢を取りながら、弾力的に承認するようにはなってきているようだ。海外でも韓国や英国では、ほかの国で実施した治験の結果を受け入れるように変化が起きている。
治療薬の開発はまさに「千回開発して三つあたれば良い(千三つ)」の厳しい世界だ。このため、実用化には膨大な資金が必要になり、ベンチャーにとっては採算ラインに到達するまでには、気が遠くなるような時間がかかる。治療薬の場合は、治験、厚労省の審査など、開発に10年以上もかかってしまうのが通例だ。
ケイファーマも2016年に創業して以来、利益が上がらない状態が続いている。福島社長は「なるべく早い段階で利益を出したい」と打ち明けるものの、実現するのは簡単ではない。大手製薬会社が手掛けていない希少疾患にターゲットを定めて治療薬の開発を進める企業姿勢は、これまで見放されてきた患者には希望を与えるだろう。一つでも多くの治療薬が実用化されることを期待したい。
そのためには安全性を考慮しながら、長期化しがちな治験の審査期間が、少しでも迅速化されることを望む。
この記事を読んだ方に AI活用、先進企業の実践知を学ぶ
ディップは、小さく生成AI導入を開始。今では全従業員のうち、月間90%超が利用する月もあるほどに浸透、新たに「AIエージェント」事業も立ち上げました。自社の実体験をもとに「生成AIのいちばんやさしいはじめ方」を紹介します。
KDDIのDXブランド「ワコンクロス」 パートナー企業との「リカーリングモデルの利点」は?
東芝のDXブランド「TOSHIBA SPINEX for Energy」 キーマンに聞く圧倒的な強み
なぜ日立はDXブランドの“老舗”になれたのか? Lumada担当者が真相を明かす
なぜ富士通「Uvance」は生まれたのか サステナビリティに注力する強みに迫る
NEC「ブルーステラ」誕生の舞台裏 コンサル人材を自社で育成する強みとは?
NECは生成AIでどう変わる? トランプ政権誕生の影響は? 森田社長に聞いた
“孫正義流”ChatGPTの使い方とは? 「部下と議論するより面白い」
孫正義「A2Aの世界が始まる」 数年後のAIは“人が寝ている間に”何をする?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング