全員が「一律週40時間」働く必要ある? “短時間正社員”が問い直す、職場の常識働き方の見取り図(1/3 ページ)

» 2025年07月16日 07時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

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 「短時間正社員」という言葉が新たに、骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)2025に明記されました。「多様で柔軟な働き方の推進」として盛り込まれているのは、以下の内容です。

 短時間正社員を始めとする多様な正社員制度、勤務間インターバル制度の導入促進、選択的週休3日制の普及、仕事と育児・介護の両立支援、全ての就労困難者に届く就労支援に取り組む

 また、2025年11月の所信表明演説でも石破首相は以下のように述べていました。

 時間に余裕を持ちながら正社員としての待遇を得る短時間正社員という働き方も大いに活用すべきです

 ただ、フルタイムで働いている正社員からは、短時間正社員に対し「不平等」と見る声も聞かれます。また、育児・介護休業法により、雇用形態にかかわらず育児のための短時間勤務制度の設置はすでに義務化されています。

 「同じ正社員なのに労働時間が違うのはズルい」と感じてしまう、その不平等感はなぜ生じるのでしょうか。短時間正社員という制度の意義を掘り下げてみると、従来の働き方の常識に風穴を開け、社会に還元されるメリットが見えてきます。

「短時間正社員」制度が社会にもたらすメリットとは。写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)

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ワークスタイル研究家/しゅふJOB総研 研究顧問/4児の父・兼業主夫

愛知大学文学部卒業。雇用労働分野に20年以上携わり、人材サービス企業、業界専門誌『月刊人材ビジネス』他で事業責任者・経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。

所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声をレポート。

NHK「あさイチ」「クローズアップ現代」他メディア出演多数。


正社員の「一律週40時間」労働 それで本当に平等……?

 短時間正社員とは、以下の3点に該当する雇用形態です。

(1)フルタイム正社員と比較して、1週間の所定労働時間が短い正規型の社員

(2)期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している

(3)時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が同種のフルタイム正社員と同等

※厚生労働省「多様な働き方の実現応援サイト」より

 フルタイム正社員については、次のように説明されています。

 1週間の所定労働時間が40時間程度(1日8時間・週5日勤務等)で、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結した正社員

 令和5(2023)年度の雇用均等基本調査によれば、短時間正社員制度を利用した人の割合は3.2%にとどまっています。これは、正社員と呼ばれる人の大多数が週40時間程度のフルタイムで勤務していることを如実に示す結果です。

 冒頭でも触れたように育児・介護休業法では、正社員として働いている人も含めて3歳未満の子を養育する場合を対象に、原則として1日6時間勤務にするよう定められています。短時間正社員制度の利用者は81.6%が女性であり、基本的に子育てするための福利厚生と位置付けられていることが見てとれます。

 日に6時間勤務で週5日働いた場合、1週間の労働時間は30時間。フルタイム勤務の週40時間と比較すると10時間も短い計算になります。1年は約52週なので、年間520時間。日数にしておよそ21.7日分です。週40時間以上職場に拘束されて働くフルタイム正社員としては、同じ正社員として扱われることを不平等に思うかもしれません。

 こうした点を考慮すると、短時間正社員は制度をつくるだけで簡単に導入できるものではないでしょう。お互いさまの精神にもとづいて、育児に手がかかる一定期間に限り、例外的に認める福利厚生の一環と認識するくらいが受け入れられやすそうです。

 しかしながら、正社員はフルタイムで週40時間働くことを原則とすることが平等なのかというと、一概にそうとも言えません。同じ業務に同じ時間従事したとしても、その間に生み出される成果が誰でも同じになるとは限らないからです。

 業務内容にもよりますが、成果は人によって異なり、機械でもない限り、むしろ全く同じであることの方が稀(まれ)です。

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