開館以来、常ににぎわいを見せてきたやなせたかし記念館。今回の朝ドラ効果によってさらに来場者が増えることが予想される。うれしい悲鳴ではあるが、過去を振り返ると、施設側にとっては懸念事案でもあるのだ。以前から、ゴールデンウィークや夏休みなどは来場者が殺到していた。すると何が起きるか。1つは道路の渋滞である。
「記念館までは一本道なので、手前の土佐山田町から数キロにわたって渋滞することがよくありました。そうなってしまうと記念館よりも奥のエリアに住んでいる方々は通行できなくなってしまい、苦情の電話もありました」
道中に店はほとんどないため、トイレの問題なども発生する。
また、渋滞が引き起こすさらに深刻な問題は、緊急車両が通れなくなることだ。やなせたかし記念館の周辺地域は高齢化が進み、80代や90代の住民もいる。救急車を呼んでも、道路が渋滞していては通行が困難になる。
来場者の殺到による影響はそれだけではない。やなせたかし記念館にようやく到着したとしても、今度は入館待ちの長蛇の列ができているのだ。特に夏場の炎天下は過酷で、施設の特性上、乳幼児も多く危険である。
こうした課題を解決するため、やなせたかし記念館はオンラインでの事前予約制に切り替えた。同施設を管轄する香美市教育委員会にて生涯学習振興課文化班・地域教育班の班長を務める宇根由紀さんは次のように説明する。
「近年、渋滞自体は収まってきましたが、アンパンマンの好きな子どものいる世代の動き方は、午前10時から午後2時ごろに集中してしまいます。そのため、夏休みやゴールデンウィークには、入館を待つ行列ができることが多々ありました。一方で、夕方の時間帯はやや落ち着きます。空いている時間に来ればゆっくり見ていただくことができ、駐車場も分散する。そういった狙いもあります」
このタイミングで運用変更を決定したのは、やはり朝ドラによる集客効果を見据えてのことだ。ちょうど施設の老朽化が問題になっていたため、2024年11月から2025年3月末まで修繕工事などのために閉館した。そして3月29日のリニューアルオープンに合わせて、事前予約に変更するとともに1日の上限を約3000人に設定。これにより、入場待ちの列を解消しようとした。
3000人という数字の根拠はこうだ。
「高知工科大学の先生に協力していただき、駐車場の渋滞シミュレーションなどを行いました。結果、1日に3000人であれば、無理なく受け入れられるのではないかとなりました。今年のゴールデンウィークも特に問題はありませんでした」(宇根さん)
予約システムは、レジャー予約サービスの「アソビュー」を採用。混雑の解消にはつながったが、まだ事前予約制に変わったことへの周知が足りておらず、来場して初めて知り、その場でスマホを使って予約する人もいる。
また、事前予約を知っていたとしても、直前に予約が入ることも多い。それは、来場者の多くが小さな子連れであることが関係する。
「どうしても当日のお子さんの体調を見てから決めたいという方もいます。そのため、何日も前から予定を立て、予約をするのは難しいようです。当初は当日午前9時の段階で、来場者数をある程度把握できると思っていましたが、まだそうはなっていません。開館時には『今日は全然予約が入っていないな』と思っていても、その後にどんどん入ってくることもあります。結局ふたを開けてみないと分からないため、現場からすると運用上の悩みはあります」(仙波さん)
書類でよく見る「シヤチハタ不可」、シヤチハタ社長に「実際どう思ってますか?」と聞いたら意外すぎる答えが返ってきた
「子どもだから分からなくていい」は間違いだ――やなせたかしが貫いた美術館のあり方
部下に「仕事は終わってないですが定時なので帰ります」と言われたら、どう答える?
仕事が遅い部下に“あるテクニック”を教えたら、「チーム全体の残業時間」が3割減ったワケ
新入社員「Web会議でカメラオンにする必要なくないですか?」 上司のあなたはどう答える?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング