人口5000人の町に年間24万人――「朝ドラ特需」に沸くやなせたかしの故郷、渋滞・長蛇の列をどう制御した？（3/5 ページ）

[伏見学，ITmedia]

子どもだましではない作品が多数

　この「美術館」としての立ち位置が、幅広い層をひきつける要因となっている。やなせたかし記念館は、小さな子どものいるファミリー客がメインではあるものの、大人のリピーターも少なくない。その理由は、「奥行き」のある作品を数多く展示しているからだという。アンパンマンだからといって決して子どもだましではなく、やなせ氏の作品が持つ深い世界に来場者が導かれていくのだ。

　その代表例が「タブロー」と呼ばれる作品である。タブローとは1枚の絵に物語をのせて描かれたキャンバス画のこと。これらはやなせたかし記念館をオープンするにあたって、やなせ氏が特別に描き下ろしたものだ。キャンバスのサイズは30号や50号と、大きくて目をひく。展示できるのは毎回数十点だが、実は百点以上を所蔵しているという。

大人たちをもひきつけるタブローの作品 ©やなせたかし（やなせたかし記念アンパンマンミュージアム振興財団提供）

　仙波さんによると、こうした作品はやなせ氏が見てきた高知の原風景を描いたものだという。

　「やなせ館長がどのような風景を見ながら育ってきたのかを感じていただきつつ、最終的にアンパンマンの世界にも影響を与えているのが分かる作品です。作品を解説してしまうと子どもたちの想像力を狭めることになってしまいますが、大人の方にはそうしたことを想像しながら鑑賞していただくのが良いと思います。やなせ館長は開館時、77歳でした。すでに売れっ子で、絵本も数多く出版しながらこのサイズの絵を年間50枚ほど描いていたのは、相当な体力だと驚くばかりです」

　最初は子どもや孫のためにやなせたかし記念館に訪れた大人たちが、タブローの作品の前で立ち止まり、じっくりと鑑賞していることもよくあるという。

　「ポストカードもたくさんお買い求めになります。やなせ館長が想像していた通り、大人にとっても見応えのある作品になっているのではないかとは思います」