自動車業界は電動化やカーボンニュートラル、新技術の進化、消費者ニーズの変化など、さまざまな課題に直面している。変化が激しい環境の中で、求められる戦略は何か。未来を切り開くには、どうすればいいのか。本連載では、自動車業界の未来を多角的に分析・解説していく。
クルマにとって最も重要な機能とは何だろうか。燃費や加速性能を左右するエンジンだという人もいるかもしれない。快適さを左右する乗り心地だという人もいるだろう。
この記事のタイトルからピンときた人もいるかもしれないが、ドライバーの好みや走行目的にかかわらず、ブレーキこそクルマで最も重要な機能の一つではないだろうか。
クルマが誕生した頃のブレーキは、もちろん現代のクルマのようなディスクブレーキでも、ドラムブレーキでもなく、自転車などに多いリムブレーキでもなかった。
クルマを最初に発明したカール・ベンツは、1885年に作り出した第一号車で、すでにドラムにレザーベルトを巻き付けるようなブレーキをクルマに装備している。
1899年製のダイムラーのトラック。後輪の内側にある白い輪にレザーベルトが巻き付けられており、運転席横のレバーを引くことでベルトの張力が高まり制動力を発揮する(写真:Sergey Kohl - stock.adobe.com)また、馬車時代から使われていた車輪の外側、すなわちタイヤ表面にパッドを押し当てる、かなりシンプルかつ強引なシステムで、制動力もさほど期待できないブレーキも存在した。その頃は速度が自転車程度であったことに加え、他の交通手段が少なく、道路も未舗装で転がり抵抗が大きかったため、ブレーキに対する要求は高くなかったようである。
とはいえ、当時は走行している台数の割に事故も多かったことは想像に難くない。そこからクルマは、エンジンや足回りとともにブレーキの性能を急速に高めていったのである。
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