クルマのブレーキはどう進化する? “最重要装置”の課題と未来高根英幸 「クルマのミライ」(4/6 ページ)

» 2025年08月01日 08時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

広まってきたブレーキ・バイ・ワイヤ

 現在はABS、TCSとともにESCも1つのブレーキシステムに統合されている。さらにSUVなどのオフロード性能が求められる車両には、デフロックの代わりにブレーキでタイヤの空転を防ぐ電子デフロックや、坂の傾斜を検知して坂道発進をサポートするヒルスタートアシスト、滑りやすい下り坂でも速度を自動制御するヒルディセントコントロールなどの機能も盛り込まれた。

ESCを搭載した車両の電子制御システムの例。ステアリング機構からの情報と車両の動きを照らし合わせて、不安定な挙動を検知すると4輪のブレーキを独立して制御することで安定させる(写真:トヨタ)

 さらにミリ波レーダーや赤外線レーザー、カメラなどで前走車や障害物との速度差や距離をセンシングし、ドライバーに警告したり自動で急ブレーキをかけたりする衝突被害軽減ブレーキも、ブレーキの進化のおかげで実現した機能だ。これによって衝突事故は激減したが、搭載車であっても高速道路での玉突き事故などは起きているため、まだまだ改善の余地はある。

 そして、ブレーキ・バイ・ワイヤである。ついにブレーキペダルとディスクブレーキは物理的なつながりをもたず、電気信号を介して制動力を調整するようになる。

 初期のバイ・ワイヤは、ボッシュによって開発され、メルセデス・ベンツの乗用車に採用された。これは万が一システムエラーが生じた際に、物理的なブレーキとして作動するようフェイルセーフが導入されていた。

 しかし、それはフロントブレーキのみ緊急的に使えるようにするものであり、走行中に急にシステムエラーが起きてしまうと十分な制動力を発揮させることは難しく、衝突事故も続出した。

 それでもブレーキのサプライヤーや自動車メーカーは、こうした課題を教訓に辛抱強く開発を続け、今ではブレーキ・バイ・ワイヤは日本車にも広く使われるようになった。

 しかし、欧州の環境規制「EURO7(ユーロ7)」では、排出ガスだけでなく、ブレーキダストの排出量まで規制されるようになる。いよいよ摩擦式のブレーキでは限界を迎えつつある。

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