その頃、自動車業界で圧倒的にリードしていたダイムラー・ベンツは、1920年代にはリアに続いてフロントにも大きなドラムブレーキを備えたモデルを生産している。高性能モデルではすでに最高速度が時速190キロに達していたが、タイヤやブレーキの性能はまだまだ十分とはいえなかった。
1920年代のレースで活躍した高性能モデル、メルセデス・ベンツSSK。前輪の内側にもドラムブレーキを備える。ドラム外周には冷却のためのフィンが刻まれている(写真:andrey gonchar - stock.adobe.com)クルマにディスクブレーキが使われるようになるのは1950年代に入ってからのことだ。まずはレーシングカーに採用され、耐フェード性(ブレーキが熱によって利きにくくなる現象を抑え、安定した制動力を保てること)の高さが証明されると、1960年代から乗用車に使われ始める。
乗用車への採用が遅れたのは、ディスクブレーキは冷却性が高い半面、ブレーキパッドの面積が小さく、より強い押し付け力が求められるため、ドラムブレーキより大きな力を制動力に変換しなければならなかった。
ドラムブレーキは円筒の内側に摩擦材を押し付けるもので、回転方向に沿って押し付けるため、摩擦材自身がドラムとの接触面に食い付くように働く。そのため、より高い制動力を発揮できたのだ。
大型トラック用ドラムブレーキの内部構造。ホイールとブレーキドラムを取り外した状態。この上からブレーキドラムをかぶせ、半円状のシューを内側から押し付けることで制動力を発揮する(写真:Adobe Stock)エンジンの吸気圧力(負圧)を利用して、ブレーキペダルの踏力を増大させる倍力装置(サーボ、ブースターなどと呼ばれる)が開発されると、乗用車へのディスクブレーキ採用が一気に進んだ。
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