クルマのブレーキはどう進化する? “最重要装置”の課題と未来高根英幸 「クルマのミライ」(3/6 ページ)

» 2025年08月01日 08時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

ブレーキのインテリジェント化が進む

 1980年代、エアバッグとともに導入され始めた安全装置がABS(アンチロック・ブレーキ・システム)だ。文字通りブレーキによるタイヤロックを抑え、滑りやすい路面でも安定した制動力を発揮する。

 ここからブレーキは、単にペダルの踏力を伝えるだけの装置から、制御機構を備えた装置へと進化した。

 そして、ブレーキのインテリジェント化が進んでいく。加速時などにタイヤの空転を抑えるTCS(トラクション・コントロール・システム)、スロットルバルブや燃料噴射の制御に加えて、ブレーキでもタイヤの駆動力を調整できるようになる。

 そして、4輪の制動力を独立して調整できるようになると、ブースターも電動化され、自在に制動力を発生・増減させられるようになった。これによって前後左右どれかのブレーキだけを作動させることで、クルマの姿勢を制御できるようになった。ESC(エレクトリック・スタビリティ・コントロール=横滑り防止装置)と呼ばれる、高度な電子制御式のブレーキ制御装置である。

ESC作動の例。左の図はカーブを曲がり切れないアンダーステア状態(旋回Gよりステアリング舵角が大きい)と判断して、左後輪に強くブレーキをかけ旋回Gを高めると同時に右側前後輪にも弱くブレーキをかけて車速を落とす制御を行い軌道を回復させる例。右の図はオーバーステア状態(ステアリング舵角より旋回Gが大きい)を検知して、右側前輪のブレーキだけを作動させて旋回Gを打ち消してスピンモードを防ぐように働く(写真:ボッシュ)

 クルマの速度や、旋回方向の角加速度、ステアリング舵角、エンジン回転や変速機のギア位置などを常に検知。クルマの姿勢が不安定と判断すると、エンジン回転を抑えると同時に4輪のブレーキを独立制御する。これにより車両の姿勢を安定させる。

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