勤続年数と昇給カーブの不一致についても、少し考えてみましょう。
みなさんもご存じのとおり、公務員は俸給表と呼ばれる給与額表に基づいて給与の額が決まります。給与を上げるには勤続年数を増やすか昇級する(偉くなる)しかありません。昇級自体も年功序列制度の影響を受けるとすると、結局のところ長い勤続年数を経なければ給与は上がらないということになります。
公務員の方から「私たちは一生懸命やってもやらなくても給与が変わらないから」と言われることがあるのですが、実績で給与が変わらないというのは民間人の筆者から見ればちょっとしたストレス要因にも思います。
(補足すると、実績により昇級の度合いが考慮されることもありますし、賞与も実績を反映することがあります。振れ幅は大きくありませんが)
筆者もさまざまな自治体の中で職員を見てきたので、その中の経験での話ですが、若手職員の中にはプライベートが大変充実しているせいか、手取りの給与の中で生活をエンジョイするのに苦労している方もいます。
学生時代のアルバイトの感覚のまま「手取りを増やすのならば時間外勤務(残業)をしなければ」と、必然性の薄い時間外勤務を希望する職員もいるという話も聞きます(実際にそのような勤務が成立しているかは各自治体によりますが)。これを「生活残業」と呼ぶこともあります。
残念ながら、このマインドでは生産性が高まりません。最初から労働時間を長く取っているのですから、その長い労働時間の中で業務をこなせばいいと考えて、密度が薄くなるのは当然です。
一方で、自治体の部署によっては、繁忙期はとにかく忙しく、誰でもいいから手伝ってほしい、という場面もあります。
あるいは年度の途中で突発的に発生した業務を担当する場合、職員が柔軟に配置されず慢性的に人員不足になるケースもあります。
つまり庁内全体を見渡しても、薄い密度で業務をこなしている職員と、多忙を極める職員が混在していて、その平準化がうまく行っていないとするならば、双方にとって良い方策も考えたいところです。
そこで、筆者はこんなルールを庁内に設定することを提案したいと思います。
ただこれだけです。いわゆる「庁内ワークシェアリング」ですね。
これにより得られるメリットは次のとおりです。
必要な投資は、
――だけです。悪くない取り組みだと思いますが、いかがでしょうか?
庁内ワークシェアリングとは少し違うのかもしれませんが、愛知県一宮市で興味深い取り組みを進めています。
それぞれの業務に繁閑差のある市税担当3課(財務部の市民税課・資産税課・納税課)の若手職員に対して、相互の兼職発令を行うことで、柔軟な業務の協力体制を構築するというものです。
記者会見では「市税の関連業務を各職員が異なる視点で従事することで、税に関する包括的な知識の習得・スキルアップ、市民サービスの向上につなげます」とありました。
これは時間外勤務とは全く別の視点の話なので、同列にしてはいけないのですが、庁内全体の業務の平準化という面では近いものがあると思います。
実はいくつかの自治体で「庁内ワークシェアリング」について、アイデアを示したことがあるのですが、どこも総論賛成なのに先に進まず、という状況でした。もし何か課題があるのならば、ぜひ教えてください。
次回はいよいよ現実的になってきたAIエージェントの話題に踏み込みたいと思います。
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