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売上高「過去最高」 なぜ「Bリーグ」の人気は“うなぎのぼり”なのか?(1/2 ページ)

» 2025年08月15日 08時00分 公開
[武田信晃ITmedia]

 2025年10月に新シーズンが開幕する男子バスケットボールのプロリーグ「B.LEAGUE」(Bリーグ)。今年で創設10周年を迎えるBリーグは、2023〜2024年の売上高が632億円と過去最高を記録。人気は、うなぎのぼりだ。

創設10周年を迎えるBリーグは、2023〜2024年の売上高が632億円と過去最高を記録。人気は、うなぎのぼりだ(以下クレジットのない資料は「Hello Friends! W!th LINEヤフー」提供)

 これを実現した取り組みの1つとしてLINEを使った顧客体験DXがある。Bリーグは注力した取り組みとして「新たなファンの層」「アリーナライブ エンターテインメント」「デジタル活用」の3つを掲げた。デジタル活用においては「LINE公式アカウント」と、LINEアプリ上で店内オーダーや会員証などの機能を提供できるサービス「LINEミニアプリの活用」を挙げている。

Bリーグは「新たなファンの層」「アリーナライブ エンターテインメント」「デジタル活用」の3つに注力

 その結果、BリーグのLINE公式アカウントの友だち数は2025年5月現在で836万人、クラブのLINE公式アカウントにおけるB1からB3までの総友だち数は167万人に上る。

 なぜBリーグは独自のアプリ開発ではなく、LINEヤフーのLINEミニアプリを利用しているのか? LINEヤフーのメディア・エンタメ推進本部の寺山健太郎本部長と、Bリーグのデジタルコミュニケーショングループの湯川伸介アシスタントマネージャーに話を聞いた。

寺山健太郎(てらやま けんたろう)LINEヤフーコーポレートビジネスカンパニー ビジネスデザイン統括本部 メディア・エンタメ 推進本部 本部長。2013年LINEへ入社。LINE公式アカウント(旧LINE@)立ち上げに参画。LINE Payやソフトバンクへの出向を経て、2021年にLINEパートナー営業本部 本部長に就任。2025年4月よりLINEヤフー メディア・エンタメ推進本部 本部長に就任
湯川伸介(ゆかわ しんすけ)愛知県出身。前職までは主にWEBマーケティングに関する企画/制作を中心に従事。 前職よりスポーツを中心としたWEBサイトの企画、制作、運用などを担当。2020年にBリーグに入社し現職ではデジタルマーケティング、CRMなどを担当

ダウンロード疲れを回避 LINEミニアプリで何ができるのか?

 LINEミニアプリでは何を提供しているのか。まずBリーグのLINE公式アカウントを友だちに追加すると、試合やキャンペーンの告知、オフィシャルグッズの紹介、アリーナ周辺情報を提供する。またイベント時には、LINEミニアプリを使って、各クラブのマスコットキャラクターの総選挙などにも参加できるようにした。

 オールスターゲームでは、試合開催地でLINEミニアプリを活用したスタンプラリーを実施。2025年1月に千葉県船橋市で開催した「りそなグループ B.LEAGUE ALL STAR GAME WEEKEND 2025 in FUNABASHI」(以下、オールスター)への参加店舗は108店、参加者は7435人と、年々増加している状況だ。参加者の7割が加盟店で1000円以上の買い物をした。開催地に再び訪れたいと思う人も増えている。

 オールスターと「りそなグループ B.LEAGUE FINALS 2024-25」 では、モバイルオーダーなども導入。飲食店の長蛇の列に並ぶという顧客体験を改善させたという。

 BリーグとLINEヤフーの関係性も見てみたい。まずLINEヤフーは、Bリーグをコミュニケーションパートナーとして支援している。一方で、BリーグのLINE公式アカウント、LINEミニアプリ、LINE広告、LINEスタンプなどは、Bリーグが広告主としてLINEヤフーのサービスを利用している形だ。

 筆者としては、Bリーグは、ネイティブアプリを制作しても良かったように見える。だが実際には、2023年からLINEヤフー社のLINEミニアプリを通して、ファンに対して各種サービスの提供を始めた。

 Bリーグの湯川アシスタントマネージャーは「状況に適したものを提供していくのがベストだと思っていますので、将来的には独自アプリを作るかもしれません。しかし、若年層にアプローチするなど、LINEを通して約1億人(日本国内、2025年3月末時点でLINEのMAUは9800万人)にアプローチできるメリットは、現時点だと大きいです」と話し、LINEヤフーが有する巨大な顧客基盤が魅力だったことを明かした。

 LINEミニアプリのメリットは「ダウンロード疲れがない」点だという。寺山本部長は「現在、新しいアプリについては、心理的にダウンロードするハードルという(消費者の)障壁が存在しています。しかし、すでにダウンロードを終え、日常的に使っているコミュニケーションアプリがLINEです。LINE内にあるLINEミニアプリを通じて、いろいろなサービスを提供できるのが、強みでありプレゼンスです」と胸を張る。

横浜アリーナ全興行で「売店の売上高」が過去最高

 ユーザーはどんなメリットを享受できるのか? 例えば、ユーザーのホーム画面に定着しているLINE上でアプリを展開できるため、起動までの時間が非常に短い。飲食店では、注文した料理が出来上がったというメッセージがLINE上に届くため、行列に並ぶ必要がないといった利点もある。このように、LINEミニアプリの最大のキーは「時間短縮」によるストレス軽減にあるようだ。寺山本部長は「LINEミニアプリのコンセプトは、そこに近い部分があります」と認めた。

 他にも、会員証の提示が必要な場合、これまでは財布を開いて会員証を探していたが、その不便を解消できる、LINEミニアプリを使った会員証サービスも提供。もし提携しているポイントサービスがあれば、ポイントを加算するサービスの提供も実現可能だそうだ。

 湯川アシスタントマネージャーによると、特にLINEミニアプリの効果を感じたサービスはモバイルオーダーだったという。「りそなグループ B.LEAGUE FINALS 2024-25」を開催した横浜アリーナでは、同アリーナ自体にもモバイルオーダーを使用した経験がなかったそうだ。そこに両者が力を合わせてモバイルオーダーシステムにトライした結果「これまで開催された横浜アリーナ全興行の中で、売店の売上高が過去最高を記録しました。モバイルオーダーにより、回転率が上がり、対応できる客数が増加したからです」と明かす。

モバイルオーダーによって対応できる客数が増えたことで、横浜アリーナ全興行中、売店の売上高が過去最高を記録した

 1日で1店舗あたり注文数が、平均200ほどあったという。同アリーナ内には5店舗の売店があるので、1日あたりの総注文数は1000。ファイナルは第3戦までもつれたので、3000オーダーが入った計算になる。

 「(全国に)新しいアリーナができ始めていますが、モバイルオーダーを含めたLINEミニアプリのノウハウは、関係者に全て提供していきたいです」(湯川アシスタントマネージャー)

モバイルオーダーを含めたLINEミニアプリのノウハウは横展開されそうだ
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