なぜミツカンは謝ったのか？ 「女性蔑視」批判をスルーできなかった、オトナの事情：スピン経済の歩き方（7/7 ページ）

[窪田順生，ITmedia]

企業危機管理で本当に難しいのは

　ミツカン内部でどのような議論がなされたのかは分からないが、筆者の経験則として危機管理で悪手を選んでしまう企業というのは、「長い歴史を誇る大企業」であることが少なくない。

　歴史があるということは「しがらみ」も多い。利害関係者が複雑に絡み合っているし、OBや相談役などの重鎮、長老的な人たちもいて、あれやこれやと好き勝手に口を挟んでくる。危機管理対応が「組織内の論理」に流されやすいのだ。

　たまに名門企業で不祥事が起きると、「なんであんな立派な会社なのに、危機管理がグダグダなの？」と不思議に思う人もいるだろう。しかし、多くの場合、その会社は「内部調整」に追われているからである。

　このような混乱を避けるには、「緊急時の意思決定ルート」をしっかりと確立して、「外野」に口を挟ませないように防衛線を張っておくこと、そしてトレーニングを繰り返すしかない。

　巨大組織で危機管理を担当する方は、ぜひ平時から備えていただきたい。

窪田順生氏のプロフィール：

　テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング（取材対応トレーニング）を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』

　近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論　「日本人すごい」が日本をダメにする』（さくら舎）。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』（共著／SBクリエイティブ）、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』（講談社α文庫）など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』（小学館）で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受