東京・築地に拠点を構える、浄土真宗本願寺派の寺院「築地本願寺」。400年以上の歴史を有する築地本願寺は今、“スマートテンプル”としてその在り方を大きく変化させている。
2019年に僧侶にPC、スマートフォンを配布したことを皮切りに業務のデジタル化、DXを推進。現在はZoom会議やリモートワークの実施はもちろん、本堂の様子をライブ配信し、オンライン上でも僧侶がお経を唱える様子を見れる環境を整えた。
他にも、築地本願寺と接点がある人々の情報をデータベースで管理したり、「築地本願寺公式アプリ」を提供して仏教についてのコンテンツを配信したり、会員向けのプログラム「築地本願寺倶楽部」も展開。人々との接点をデジタル上にも広げてきた。
2020年には結婚相談サービス「築地の寺婚」も開始し、これまでの枠に収まらない事業展開を推進する。
「お寺の様子をライブ配信するのも、結婚相談サービスを始めたのも、全ては原点回帰なんです」──そう語るのは、築地本願寺 副宗務長の東森尚人さんだ。
歴史を重んじる宗教施設から、デジタルを積極的に活用する“スマートテンプル”に姿を変えた築地本願寺。どのように「寺のDX」を進めてきたのだろうか。
浄土真宗本願寺派は創建400年以上の歴史を持つ。1万以上の寺を全国に構え、3万人以上の僧侶が働いている。
同寺では2012年ごろから、「このままの体制では、持続可能な寺運営を続けられないのではないか」と、それまでの運営を大きく見直す改革をスタートした。1万以上ある寺の多くは、農村、漁村といった地方にある。今後都心部への一極集中が進み、地方はさらなる人口減が見込まれる中、この先どうしたら新たな人々と接点を持てるのか考えたという。
所属寺院を持たない宗教浮動層が増え続け、“寺離れ”が進む中で何ができるか──。同寺では「より開かれたお寺をめざす」方針を掲げた。
築地本願寺はさまざまな改革を行った。まず、より気軽に寺に立ち寄れるような工夫として、施設内にカフェを新設。朝食の時間帯に提供する「18品の朝ごはん」は話題を集め、人気メニューとなっている。
また、個人ごとに遺骨を収蔵する合同墓も開始した。合同墓は生前に個人が申し込める墓で、年間の管理費用は発生しない。生活スタイルの変化により、墓へのニーズも多様化する中で、多くの支持を得ているという。
デジタル化、DXの取り組みも強化している。
2019年に僧侶にPC、スマートフォンを配布。そこから会議のオンライン化が進んでいたため、コロナ禍に見舞われた2020年4月には、スムーズにリモートワークへの移行が進んだ。
2019年から、本堂内の様子をライブ配信する取り組みも開始。現在は僧侶による法話(僧侶が分かりやすく説明する阿弥陀如来の話)の様子を、築地本願寺に訪れなくても気軽に聞き、見れる環境が整っている。
英語による法話もYouTubeで配信している。
コロナ禍で人々が築地本願寺にこれないときは、オンラインで法要を完了できる仕組みを整えた。参加者が高齢でデジタル環境にうまくアクセスできないことも予想されたため、PCを自宅に配送し、電源ボタンを押すだけでオンライン上で法要に参加できるようにしたという。
コンタクトセンター経由の問い合わせや会員プログラム「築地本願寺倶楽部」への登録など、築地本願寺と何らかの形で接した人々の情報はCRM(顧客管理システム)でデータベース化した。データベースを基に、メルマガでの情報発信などを強化しているという。
現在約7万人が登録する会員向けプログラム「築地本願寺倶楽部」では、人々が継続的に築地本願寺と接点を持ってくれるよう、さまざまなサービスを用意する。施設内のカフェの割引サービスを提供して寺に足を運ぶ人を増やす狙いがある他、終活や人生に関する悩みを僧侶に相談できるサービスも提供している。
銀座にサロンを設けており、会員の悩みや相談を直接聞ける場もある。
今では、結婚相談サービス「築地の寺婚」などこれまでの寺の枠に収まらない事業拡大に成功している。
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