こうした問題を解決できるのが「AT」である。先ほども申し上げたように、この観光はもともとその地域にある「自然」「文化体験」を活用したアクティビティだ。「ジャングリア沖縄」のような巨大テーマパークを無理に頑張って建造する必要はないので、はるかに安上がりに済む。自然という観光資源を生かすための発想や、安全性・アクセス・人材が確保できれば、他ではできない唯一無二の「体験」を提供できるのだ。
そのようなATを提供できる地域が日本全国にはまだまだ未開発のまま眠っている。世界のATの専門家たちはそう見ている。
2025年5月、米国に本部を置く世界最大のアドベンチャートラベル業界団体「アドベンチャートラベル・トレード・アソシエーション(ATTA)」のアドバイザー役、ジェイニー・ウェルシュさんが東北6県を視察した。その際、青森県・八戸市の種差(たねさし)海岸を視察してこのように述べたという。
「この美しさとアクセスの良さだけでもきっと人気が出ると思います」(青森放送NEWS NNN 2025年5月30日)
2025年9月には、東北観光推進機構と観光庁の働きかけでアドベンチャーツーリズムのモニターツアーが行われ、実際の商品化に向けた商談も予定されている。
このような形で 東京・大阪・京都以外の地域こそが日本の本当の魅力を持つ、という情報がATを通じて世界に広がれば「観光公害」も徐々に解消されていくだろう。
大都市のような便利さはないが、広大な自然の中でそれほど観光客も多くない地域でゆったりと過ごしたいという外国人観光客が確実に増えていくからだ。
私事で恐縮だが、先ほどのATTAのニュースを見たこともあって、8月に青森を観光してきた。「ねぶた祭り」を見学した後、奥入瀬を散策したり、古民家に民泊したり、十和田湖のボートツアーなどに参加してきてあらためて感じるのは、日本の「自然観光」には、まだまだ大きな伸び代があるということだ。
現地では、東京・大阪・京都では至る所で見る外国人観光客もそれほど多くなかった。青森駅近くの「のっけ丼」が食べられるスポットでは、さすがにいろんな国からの観光客を見たが、それ以外のところではほとんど気にならなかった。
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