時短勤務(短時間勤務制度)とは、育児や介護などと仕事との両立を支援するために、1日の所定労働時間を短縮する働き方です。1日の労働時間を原則6時間とする制度で、育児・介護休業法により一定の要件を満たす労働者が申請した場合、会社は認める義務があります。
企業が「時短勤務だから管理職ができない」と一方的に判断し、降格することは労働基準法第8条(不利益変更の禁止)、育児介護休業法第23条(所定労働時間の短縮措置)により、違法とされる可能性があります。つまり、労働条件の変更が労働者にとって「不利益」となる場合、原則として本人の同意が必要であり、育児のために時短勤務を希望しただけで、本人の能力や成果に関係なく役職を外すのは合理性を欠くと判断されるのです。
また、労働基準法でいう「管理監督者」に当てはまる管理職は本来、労働時間ではなく業務内容や責任範囲によってその職務を判断されるものです。時短勤務を理由に役職を外すこと自体、正当性が問われることになります。
とはいえ、企業の現場管理職や、課長など中間管理職の多くは、権限や報酬の面から見た場合管理監督者の条件をクリアしていません。労働時間一つを取っても、業務の進行状況にかかわらず、あらかじめ定められた時間内で勤務しています。そのため、企業側が「時短では管理職の職務を十分に果たせない」との考えに至ると思われます。
そもそもなぜ、企業が管理職の時短勤務を認めないケースがあるのか、もう少し掘り下げてみましょう。
部下の業務中に管理職が早々に退社する光景は「先に退社=責任放棄」と受け取られがちです。特に日本企業では上司が最後まで残ることが習慣化していることが多いため、管理職の不在がチームの志気に影響することもあり得ます。
管理職が不在の時間帯に残された業務を部下が対応する場合、本来の役割分担が崩れ、部下に不要な責任とストレスを課す恐れがあります。組織全体の運営効率が低下することで、職場のパフォーマンスに影響します。
管理職が不在の間は即断即決ができず、現場の対応が後手に回りがちで、特にトラブル対応やクライアント対応においては問題視されることがあります。社外から見た時に「指導層が不在」「意思決定に時間がかかる」と評価されれば、企業の信頼性が損なわれることにつながります。
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