この記事は『2040年の人材ビジネス大予測』(黒田真行、神宅謙一郎/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
日本を直撃し始めている労働力人口の激減は、経済のみならず日本の社会生活に大きな影響を及ぼします。総務省の予測によれば、2015年時点で約7600万人だった労働力人口は、2060年には約4500万人まで減少する見込みです。これに伴い、都市部と地方部での生活の質の二極化、家族構造の変化、地域コミュニティの崩壊はさらに進むと予測されます。
地方では若年層の人口流出が続いており、農村地域や小さな町での生活は、すでにその維持が難しくなっています。具体的な例として、秋田県では2010年から2020年にかけて人口の約10%が減少し、65歳以上の高齢者が地域人口の40%を占めています。これにより、自治体運営が厳しくなり、公共サービス(学校、病院、バス路線など)の維持が難しくなるという問題が生じています。この結果、地域社会が徐々に崩壊し、住民同士の結びつきさえも希薄化しています。
家族の役割も大きな変化を迎えています。
労働力の減少と高齢化が進行する中で、家庭内での負担が増加しています。具体的には、若年世代が少なくなり、介護を担う現役世代への負担が増大。2025年には、日本全体で介護を必要とする高齢者は約700万人になり、特に共働き家庭においては、育児と介護のダブルケアが今後さらに大きな問題となってのしかかってきます。これに伴い、働き盛りの世代がフルタイムで労働市場に参加することが難しくなり、労働力不足にさらなる拍車をかけることになるでしょう。
また、労働力人口の減少は、世代間格差を拡大させる要因にもなっています。
高齢世代は年金などの社会保障制度を享受していますが、それを支える若年層や現役世代は、増大する負担を強いられ続けています。経済産業省の調査では、現役世代の年金負担額は2040年に現在の約1.5倍に達する可能性があるとされています。これにより、若者の将来不安が増大し、結婚や子供を持つことを躊躇する傾向が強まっています。これが少子化をさらに加速させる「負のスパイラル」の要因になると考えられます。
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