山本常務の答えは規模の総合力だ。「私たちはもともと、非常に多くの金融機能を持っていた。カード、証券、ロボアドバイザーなどさまざまなサービスがある。ただ、これをバラバラに提供していたのが大きな課題だった」
MUFGの真の問題は、機能の不足ではなく統合の欠如だったという。「今回、エムットという名前のもとに大きく3つのプラットフォームを作る。共通ポイントのエムットポイント、使えば使うほどステージが上がるロイヤルティープログラム、そして共通ID。これらを通すことで、いろんなサービスを一貫したサービスとして統合的に提供できるようになる」
実際、エムットスクエア高輪では銀行サービスだけでなく、クレジットカードの即時発行や資産運用の相談も一体的に提供している。「エムットを始めてから、カードの申し込みが非常に増えている。今、実はウェルスナビのお任せの資産運用のところが、店頭でのお申し込みが非常に増えている。直接お話をうかがいながら、説明も聞きながら考えたいというお客さまが増えている」と山本常務は手応えを語る。
2026年度末に立ち上げ予定のデジタルバンクについても、山本常務は自信を見せる。「別エンティティ(独立した事業体)、別システムにする。非常に軽いシステムで柔軟に動けるデジタルバンクを作る。デジタルでは相当追い付ける、むしろ追い越せると思っている」
ただし、デジタルだけの勝負でもない。「デジタルだけでは足りない。リアルの活用が重要だ」。山本常務は、デジタルバンクで自己完結できない顧客を店舗に誘導し、「リアルとデジタルのいいとこどり」を実現すると説明する。
MUFGが描く最終的な青写真は壮大だ。「人生丸ごとMUFGで支え、ロイヤルティープログラムでたまったポイントやステージを、相続のプラットフォームでお子さまやお孫さまに引き継げるようにしていく」。山本常務は続ける。「マネタイズという意味では、その方の人生丸ごとだけでなく、世代を超えてしっかり取っていける。少し時間はかかるが、かなり壮大なプログラムで進めている」
90兆円超の預金、全国に張り巡らされた店舗網、そして膨大な顧客基盤。これらの資産を統合し、世代を超えて顧客を囲い込む。後発だからこそ、部分最適ではなく全体最適を狙える。これがMUFGの答えだ。
新規預金口座100万、カード100万枚という2026年度末の目標は野心的だ。果たして周回遅れからの大逆転は実現するのか。金利復活を追い風に、MUFGのリテール再生が本格的に動き出した。
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