日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
先日、墓地霊園業界の人々がザワザワするニュースが流れてきた。
9月10日に販売を開始した「大阪メモリアルパーク」というお墓のプレオープン販売分280区画が、24時間以内に完売したのである。
この先行販売では、2人用の個別安置埋葬が諸費用込みで120万円のところ100万円に値引きされるなど確かに「お得」ではあるのだが、現地での見学会などもまだ開催していないのだ。驚くべき売れ行きといっていいだろう。
しかも、このお墓は「古墳」の形をしており、前方後円墳のまわりには高さ30センチの円筒埴輪が291個、ぐるりと並べられている。上部には真鍮(しんちゅう)製の板を設置し、そこに埋葬者の名盤プレートを貼付する設計だ。販売している会社の経営者が、明治天皇の玄孫(やしゃご)である竹田恒泰氏と聞いて二度ビックリした人も多いはずだ。
竹田氏といえば多くのメディアで活躍している作家として知られる一方、電子マネー発行・交換会社の代表取締役を務めるなど、多くの事業を手掛ける実業家としての顔も持つ。しかし、この会社は創業からまだ1年5カ月しかたっていないのだ。
そんな「新参者」が仕掛けた「古墳墓」が飛ぶように売れたことに、ショックを受けている同業者も多い。なぜかというと今、「墓不要の時代」といわれているからだ。
ご存じのように、日本は急速に少子化が進んでいる。しかも、年を追うごとにどんどん減っていく子ども世代の多くは親元を遠く離れて生活し、都市部などで自分で家族を築く。そうなると当然、せっかく立派な墓を建てたところで毎月の掃除はもちろん、年1回のお参りも難しくなっている。
論より証拠で近くの霊園に行ってみるといい。何年も誰もお参りや掃除をしていないのか、草木がぼうぼうに伸びて荒れ放題になっているお墓があまりに多いことに驚くはずだ。
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