新型プレリュードは若者に売れない? それでも日本車の未来を切り開く理由高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)

» 2025年09月19日 08時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

“特別感”を感じさせる仕立て

 しかも3ドアクーペの特性から、家族での移動手段に使われることは少ないだろう。それを踏まえて、あえて実用性よりも特別感を演出する仕立てがあちこちに施されている。

 本革を使ったシートや、ダッシュボードまでステッチを施した仕立て、パドルシフトも剛性感の高い金属製とし、ブレーキは踏みごたえがあるブレンボ製4ピストンキャリパー、さらにBOSEプレミアムサウンドシステムの搭載など、充実した標準装備で満足感を高めている。

インテリアの上質感はシビックにはないものだ。本革コンビシートや前席優先のインテリアデザインなど、パーソナルクーペとしての魅力を高める仕立てが際立つ(写真:ホンダ)

 このようなアプローチは日本車ではあまり見当たらない。あえて挙げると、メルセデス・ベンツのEクラスクーペやBMWの4シリーズであろうか。レクサスRCはやや若作りで、LCでは価格もボディも大き過ぎる。スカイラインは4ドアで、フェアレディZは2シーターだ。

 プレリュードを若者向きのクルマと思っているのは、かつてプレリュードに乗り青春を謳歌(おうか)したか、憧れた世代だけだ。自分が若かりし頃に乗っていたクルマだからだろうが、新型プレリュードは前述のように若者をターゲットにしたクルマではないのだ。

 ホンダは軽自動車を突き詰めて、単一車種では軽自動車市場でナンバーワンに輝き続けている。一方、現場では売るクルマが軽自動車中心になり、高所得者層が離れてしまった問題がある。レジェンドがなくなり、アコードも米国生産となった現在、日本では軽自動車やコンパクトカーが生産や販売の主体になってしまうと、収益性を維持するのが難しくなる。

 プレリュードは高価格なクーペであるため、大きな販売台数は見込めないだろうが、だからこそ1台当たりの利益をしっかり確保できる価格設定を行っているように見える。

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