話をまとめよう。日本企業では若手社員は主要国のような「説得・感化」「業務計画に沿った指導」を受けることが少ない。人は教えられていないことはできない生き物なので、その若手がキャリアを積んで中間管理職になっても当然、部下に対して「説得・感化」「業務計画に沿った指導」はできない。
普通に考えれば、こんな組織は崩壊してしまう。しかし、そこは「和を以て貴しと為す」の日本人である。独特の組織マネジメント手法を生み出していく。
それこそが「不機嫌」ではなかったか。
組織の中でそれなりの立場の高い人間が、機嫌が悪くなる。舌打ちをして、ため息をつく。そうすると、部下たちは「何かわれわれに不手際があったのか」と背筋が伸びる。「ご機嫌になっていただくためにもっと頑張ろう」と士気が上がる。
つまり「不機嫌ハラスメント」とは、本来必要な指導力が欠けている管理職が、その弱点を隠すために生み出した、日本特有のマネジメント手法だ。「和を以て貴しと為す」という発想を逆手にとり、不機嫌な態度で部下を動かそうとするのである。
ニュースで大きく取り上げられたので何やら最近生まれた迷惑行為のように勘違いしてしまうだろうが、実は日本企業がここまで成長してきた“陰の原動力”でもあったのだ。
裏を返せば、パワハラやセクハラと違って、これを根絶することは不可能だということでもある。
こんな時代なのでビジネスパーソンの皆さんも職場でやたらと「不機嫌アピール」をしてくる人に会う機会が増えていくだろう。
ただ、これまで述べたようにそれは「中2病」という触れるものすべてを傷つける思春期の子どものようなものなので、関わっても何もいいことはない。
それでもどうしても絡まなくてはいけなくて不快な気分にされることもあるだろうが、そのときはぜひとも心の中で「ああ、この人は能力不足を不機嫌アピールで補おうとしているんだな、気の毒に」と思って、怒りを抑えていただきたい。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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