特に徹底して追及されてきたのが、サービスの利便性です。スマホ一つで手軽に働ける世界を実現するための仕組みをとことん追求してきました。そのために従来のさまざまな規制とも向き合い、折り合いをつけてきています。
例えば、労働時間や賃金などが記載された労働条件通知書の提示方法。長らく書面での提示が必須とされてきたことが利便性を損なっていると指摘されてきましたが、行政からメールなど電子データでの提示も認める見解が出されたことで、インターネットの機能を生かしたスムーズなやりとりが行えるようになりました。
また、グレーゾーンだった給与支払いの代行業務についても行政の了解を得たことで、求人応募から給与振り込みまでをワンストップで、かつスマホひとつで完結させるサービスを提供できるようになりました。
利便性をとことん追求したこれらの改善により、求人企業と求職者双方から支持を得て今日の拡大へとつながっています。店舗運営メンバーに欠員が出て急ぎ人手が必要な求人企業やスキマ時間に働いて収入を得たい求職者などにとって、スポットワークはなくてはならない存在になりつつあります。
しかし、サービスが広がるとともに問題も指摘されるようになってきました。記憶に新しいのは闇バイト求人の掲載問題です。強盗や殺人といった凶悪犯罪につながる可能性のある求人がスポットワークを通じて行われているのではないかという指摘があり、社会的にも大きな関心を集めました。
また、実際にどんな業務に就くことになるのか勤務条件が不明なまま、待機要員であることのみ記された求人なども問題視されました。これら怪しげな求人へのスポットワーク事業者の対応は後手に回っていた感があるものの、求人掲載前に事前チェックする仕組みを導入するなどの改善を進めました。
慎重に事業を進めていたとしても、新しいサービスを構築していく際に想定外の問題が生じてしまう事態は、どうしても避けきれないものです。スポットワーク業界は、利便性を追求しながらも、都度発生する問題にこれまで懸命に対処してきたように思います。
しかしながら、業界の対応に不安を感じる事態も目に付くようになってきています。無断欠勤などがあったワーカーに対して、一部事業者が無期限の利用停止措置を課していた問題に対しては、行政から指導が入りました。
職業安定法で定められている求職全件受理が果たされなくなるとの忠告は、人材サービス業界内からも聞かれましたが、後手に回って対応しきれませんでした。
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