近藤さんによると、近年、台湾に対する関心が高まるなか、台湾語を学ぶ人も増えてきているという。近藤さんは2023年度から拓殖大学の外国語講座で台湾語の講師を担当している。初年度の受講者は約15人だったが、2024年度は約40人に増加。2025年度は「先着30人」と上限を設けて募集を開始したところ、翌日には応募枠が全て埋まる勢いだった。
台湾語学習者が増えている理由について、近藤さんは次のように話す。
「この3年間で、生徒たちに学ぶ動機をアンケートで聞いてみたところ、親戚やパートナーが台湾出身であることに加え、歌・ドラマ・映画などの台湾語コンテンツを理解したいから、という回答が目立ちました」
「背景には、2011年の東日本大震災に際し、台湾から多額の義援金が寄せられたことで、日本人の台湾に対する好感度が急激に上がったことがあります。旅行先として台湾を選ぶ人は以前よりも格段に増えました。両国間での人の行き来や結婚件数も増え、両国にルーツを持つ人も増加傾向にあります」
台湾語学習者が増える理由として、台湾社会における変化も挙げられるという。
「台湾では戦後、長らく国民党政府による中国語以外の言語に対する弾圧が続いていましたが、1987年の戒厳令解除以降、台湾語をはじめとする本土言語の復興運動が花開き、この40年弱の間に、メディアにおいても使われるようになってきました」
「その結果、台湾語などの本土言語がドラマや映画、小説などで使われるようになりました。こうした台湾語コンテンツに触れた人が、台湾語に興味を持ち、学びたいと思ってくれる。それが今の良い流れにつながっていると思います」
学習者が少しずつ増えている台湾語。日本と台湾の交流も盛んになり、旅行や仕事で台湾を訪れる機会も増えている。AI翻訳があっても、現地の言葉に少し触れるだけで、会話が和らぎ、相手との距離もふわっと近くなる。言葉は、ただの道具ではなく、心と心をつなぐ小さな魔法のようなものなのかもしれない。
最後に、ぜひ知っておいてほしい台湾語フレーズを近藤さんから紹介してもらう。台湾語は発音が「命」といえるくらい、とても大切だ。以下のテキスト画像に加えて、動画で音声も聞いてみてほしい。
「たとえほんの少しでも、台湾語を使ってみることで、中国語オンリーで話すよりも、圧倒的に台湾人の信頼が得られますよ。ぜひ話してみてくださいね」(近藤さん)
1979年 東京生まれ。台湾語研究者 王育徳の外孫。
2002年 慶應義塾大学文学部史学科卒業、2004年 早稲田大学大学院国際関係学修了。専攻は台湾先住民族(原住民族)ブヌンの近代史。2004〜8年 台北駐日経済文化代表処(駐日大使館に相当)勤務。
2007年『すぐ使える!トラベル台湾語』(日中出版)を出版。2025年前著の増補改訂版である『新版すぐ使える!トラベル台湾語』を出版。2002年『王育徳全集』(前衛出版)編集、2012年『王育徳の台湾語講座』(東方書店)共同執筆・編集、2011年『「昭和」を生きた台湾青年』編集協力。2018年 台南市「王育徳紀念館」総監修、台湾語ブースのコンテンツ担当。2019年 初の台湾語文学邦訳本『台湾語で歌え日本の歌』(陳明仁著)を共訳。2023年度〜拓殖大学外国語講座「台湾語」講師担当。
2013年よりNPO「台湾を応援する会」事務局長。台湾応援キャラ「タイワンダー☆」を通じて台湾本土文化・言語に関する情報を発信中。NPO「台湾原住民族との交流会」会員。心の故郷は台南市と南投縣信義郷Isingan(雙龍)村。
YouTubeチャンネル【近藤 綾の台湾語・本土言語講座】およびnote【近藤 綾の「台湾語って面白い!/Tai-gi tsin tshu-bī(台語真趣味)!】にて台湾語をはじめとする台湾本土言語に関する情報を発信中。
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