焼け野原の中で事業を立ち上げるので、ベンチャーは攻めるしかない。本田宗一郎のような起業家が次々と登場し、イノベーションを起こした。これはどこの途上国でも見られる普遍的な現象で、五輪も万博も関係ない。
中国のGDPは日本を軽く追い抜き、米国に迫る経済大国になっている。AIやロボット関連のベンチャー企業も増えている。これを「北京五輪」(2008年)や「上海万博」(2010年)が成長の起爆剤になったから……と解釈している人は中国にも世界にもほとんどいない。国民の生活が一定水準になれば、12億人というすさまじい人口によって経済が上向くだけの話だ。インドもそれと同じで、近く経済大国になるだろう。
このような話を聞くと、「ゴチャゴチャうるせえなあ! 万博や五輪が日本人に夢や希望を与えたのは事実なんだから、成長の起爆剤になっている可能性だってゼロじゃねえだろ」と不快になる人も多いだろうが、筆者がこのような形で万博・五輪の「神話」を否定するのには、ちゃんとした理由がある。
「万博をきっかけに関西が成長した」とか「五輪のおかげで日本は奇跡の経済成長を果たした」というご都合主義的な「起爆剤経済」の信仰が広まれば広まるほど、公金投入や政策などの「効果測定」がなおざりにされてしまうからだ。
分かりやすく言えば、「いやー、みんなすごく盛り上がってよかったね」というお祭りムード一色になったことで、ちゃんと目的達成できたのかという効果測定をしようとすると、「みんな楽しんでるんだから、水を差すなよ」とウヤムヤにされてしまうのだ。
もちろん、こんなデタラメは一般企業ではあり得ない。もし3000億円を突っ込んだ巨大プロジェクトが行われたなら、どの程度資金を回収できたのか、目標は達成できたのかとシビアに検証されるはずだ。しかし、万博や五輪は「夢」とか「未来」というキラキラワードのおかげもあって、そういう当たり前のことをすると、「野暮なヤツ」と煙たがれてしまう。
それは最近注目される「減税を成長の起爆剤に」という政策にも当てはまる。
コロナ禍でバラ撒かれた1人一律10万円給付の多くは貯蓄にまわった。国内の金融機関の預金が急増したのだ。ドイツでも経済を循環させようと「消費税の時限的引き下げ」をしたが、企業も個人もそこで得られたカネを貯蓄に回したことで、「効果はほとんどなし」という検証結果が出ている。
このような「効果測定」を見れば「減税を成長の起爆剤に」というのが眉唾なのは明らかだが、「起爆剤経済」の信者が多い日本では、そういうミもフタもないことを言ってはいけないムードがある。
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