大阪のオフィス街・淀屋橋が一大観光地に? 展望施設が生む“人流と価値”の方程式(3/3 ページ)

» 2025年10月18日 08時00分 公開
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“通過駅”が目的地に 淀屋橋エリアの潜在価値

 さて、いくら「絶景スポット」だといえども「展望施設が人の流れを変える」というのは大げさと思うかもしれない。

 しかし、いまや「大都市の展望施設」はどこへ行っても多くの観光客で大混雑だ。

 東京で「大型ビルの無料展望施設」といえば、都庁の高層階に設けられた「展望ロビー」(展望台高さ202メートル)や、麻布台ヒルズの中間に設けられた「スカイロビー」(展望台高さ約170メートル)などが思い出されるが、最近の都庁展望ロビーは多客期には30分待ちということも。麻布台ヒルズのスカイロビーは開業直後から国内外の観光客が殺到し、半年後の2024年4月からは飲食店利用客もしくはビル関係者のみへの開放となってしまった。

 こうした「展望施設人気」は大阪でも同様だ。

 大阪市内の有料展望スポットとして真っ先に思い出される「通天閣」(展望台高さ87.5メートル)は、今や1時間待ちは当たり前。「あべのハルカス」(展望台高さ300メートル)や「梅田スカイビル」(展望台高さ173メートル)にある有料展望施設も、いずれも通常の入場料金は大人2000円と高額でありながら多くの観光客でにぎわいを見せており、大阪・関西万博の開催も相まって、それぞれの近隣にある飲食店なども外国人観光客であふれている。

 淀屋橋スカイテラスは大阪最大のターミナル・梅田駅(大阪駅)からわずか3分の距離にある地下鉄駅直結、一大観光地である京都からも京阪本線で乗り換えなし。しかも展望施設は無料かつリーズナブルな価格で飲食を楽しむこともできる。今でこそ比較的ゆっくり景色を鑑賞できるものの、知名度が上がれば「混まないはずはない」のだ。

多くの人で賑わう夕闇の梅田スカイビル・空中庭園展望台。半分以上は外国人観光客だ(写真:若杉優貴)

 淀屋橋はいわゆる大阪の「キタ」にあたる梅田エリアと「ミナミ」にあたる心斎橋・難波エリアの中間地点にあたる。

 大阪市民にとって淀屋橋は「オフィス街」「市役所がある」「御堂筋線と京阪電車の乗り換え駅」というイメージであるが、百貨店やファッションビルのような大きな商業施設があるわけではなく、東京でいえば「大手町」に近い雰囲気。これまで多くの観光客にとっては「通過(もしくは乗り換え)するけど降りたことがない駅」であった。

歴史ある淀屋橋と中之島の街並み。左側は大阪市役所、右側は1903年築の日銀大阪支店。手前に見えるのは大江橋。現在の橋は御堂筋の整備に合わせて1935年に架橋されたもの(写真:若杉優貴)

 一方で、淀屋橋は江戸時代には米市場が設けられるなど、古くから大いに栄えた地だ。心斎橋や道頓堀などに比べると観光客が少なかったとはいえ、淀屋橋駅の近くには緒方洪庵が1838年に開いた私塾「適塾」や、1780年に鎮座した薬の神様「少彦名神社(神農さん)」がある。

 さらには1903年築の「日本銀行大阪支店」、1904年築の「大阪府立中之島図書館」、1913年築の「大阪市中央公会堂」(いずれも見学可能)――といった数多くの歴史建築・歴史スポットがある。歩いて10分ほどの場所には「大阪中之島美術館」「国立国際美術館」「大阪市立科学館」など、さまざまな観光文化施設が集積している。

 それゆえ、スカイテラスの誕生をキッカケに、交通結節点でもある淀屋橋を拠点としてこうした施設を周遊する観光客が増えていくことも見込まれる。

 2031年春には関西国際空港への直通列車が運行される新たな鉄道路線「なにわ筋線」の開通も予定されており、中之島には新駅が開設される予定だ。

 近い将来は淀屋橋エリアから中之島エリアを多くの観光客が周遊するようになり、「オフィスしかない」という街のイメージが変化していく可能性も大いにあろう。

ステーションワン北側から見下ろす歴史建築「中之島図書館」「大阪市中央公会堂」と大阪市役所。市役所屋上に設置されている旧庁舎の鐘楼(澪標の鐘)も見える。淀屋橋駅周辺には数多くの歴史スポットがある(写真:若杉優貴)
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