この課題に挑むのが、2023年1月に設立されたEfficだ。CEOの菅藤氏は、会計事務所向けSaaSのクラビスを創業した経験から、営業組織が抱える本質的な問題に気付いた。「創業者が熱く語ると売れるが、部下が売ると売れない。日本中の人が営業のノウハウ共有に悩んでいるのではないか」
菅藤氏が指摘するのは、既存のSaaSが持つ構造的な限界だ。「SaaSはユーザーに作業を強いる。データ入力を人間に依存する設計になっている」。商談記録ツールが登場しても、結局は人間が情報を入力し、整理しなければならない。情報ログはたまり続けるだけで、活用されない。
Efficが目指すのは、人間が指示する前に動くAIエージェントだ。Googleカレンダーと連携するだけで、商談前の企業リサーチから、商談への同席と記録、議事録作成、お礼メールの下書き、週次レポートの作成まで自律的に実行する。「究極的には、UIがないのが理想」と菅藤氏は語る。
Efficの核心は、商談データの構造化にある。全ての商談を記録し、多面的に分析して組織の資産に変える。
1時間の商談を細分化し、3段階のプロセスで構造化する独自技術を開発した。
まず、商談の目的を抽出する。商談の全ての要素が目的に紐づけられるため、ここで精度が大きく変わる。次に予算、期日、競合といった個別要素を専用のモジュールで分析する。最後にこれらを統合してスコア化し、次に取るべき行動指針を提示する。この分析プロセスで特許も取得した。
「単に文字起こしをしてプロンプトを投げるだけでは、全然精度が出なかった」と菅藤氏。プロセスごとに異なるLLM(大規模言語モデル)を組み合わせ、営業に特化した分析を実現している。
Efficは各商談を多面的に分析し、有効性をS・A・B・Cでランク付けする。本気度や適合度を判定し、次に取るべき具体的なアクションまで提示する。単なる議事録ではなく、商談の目的、予算、決裁者、競合など個別要素を構造化して分析する独自技術により、営業活動の質を定量的に評価できる。この構造化が、組織知の蓄積を可能にする蓄積された商談データからは、営業のベストプラクティスや各顧客との商談進捗情報が自動的に抽出される。どの競合にどう対応すれば勝てるのか、どのタイミングで何を聞くべきか。これらの暗黙知が、検索可能な組織の知識として残る。この仕組みが、若手の成長支援からマネジャーの組織運営まで、幅広い応用を可能にする。
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