各国の事例発表を通じて、文化交流を新たなビジネスモデルとして展開する動きが浮かび上がった。中国では日本コンテンツの翻訳配信事業が拡大しており、相互の文化交流を収益化する仕組みが確立されている。ビルボード・チャイナを統括するPenske Media Corporation(PMC)のヴァイス・プレジデントであるグージー・チマ氏は、以下のように話した。
「日本からのサポートということで、コンテンツのやり取り、中国のコンテンツを日本、中国で日本語に訳して日本に広げていくことも考えています。これは文化交流にもつながっていくと思っています」(グージー・チマ氏)
韓国では、K-POPの世界的成功で培ったノウハウを生かし、日韓アーティストの人材交流を通じた新たなビジネスモデルの構築が進む。文化交流を超えて、アーティスト育成から楽曲制作、市場展開まで一体化した協業体制の構築を目指している。特に注目されるのは、両国のアーティストが制作プロセスの初期段階から関与する統合型のアプローチだ。
「韓国と日本のアーティストが共同で(アーティストの発掘、楽曲制作、プロモーションなどを行う)A&R(Artist & Repertoire)に参加し、作詞や作曲など、クロスオーバーデビュープロジェクトを推進する方式があります」(ユナ・キム氏)
これらの国際協業は、文化の壁を越えた新たな収益機会の創出と、アジア音楽市場の拡大を実現する戦略的取り組みとして位置付けられている。
今回のカンファレンスが示したのは、創業130年の歴史ある企業が短期間で抜本的な変革を遂げた実例だった。この変革の成功要因として注目されるのは、従来の国別市場概念を根本から見直し、世界規模での事業拡大を実現した点にある。
また、各国の成果が示すのは、多角的な事業展開の威力だ。フィリピンでの大幅な事業拡大とイベント事業の収益化成功、中国での大規模フォロワー獲得、韓国でのJ-POP市場拡大といった具体的な成果の背景には、メディアコンテンツやライセンシング、イベント、データサービスという複数事業ラインを確立したハイブリッド型ビジネスモデルがある。
ビルボードの16の言語圏への事業展開と300%の成長が提示するのは、デジタル変革時代における企業経営の新たな可能性だ。チャート事業という確固たる基盤を生かしつつ、言語圏戦略と多角化モデルを組み合わせたこのアプローチは、市場環境の変化に対応しながら持続的成長を実現する実践例として、業界の垣根を越えて活用できる経営手法を示している。
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