食中毒とサイバー攻撃、どちらが怖いと思うのだろうか。おそらく一般的には「食中毒の方が命に関わるから怖い」と答える向きが多いのではないか? だが危機管理広報の現場では、サイバー攻撃の方が怖い。理由は単純で、「見えないから」だ。食中毒なら、原因や回収、再発防止策という“お決まりの流れ”がある程度見えている。
しかしランサムウェアの場合、誰が、いつから、どのデータを盗み、どこに拡散させたのかが分かりづらい。目に見えない被害を、誰にでも伝わる言葉に翻訳する。その難しさが怖い。また、一般的な危機――地震や製品トラブルなど――には「終わり」がある。地震なら復旧、製品事故ならリコールが完了すれば、一段落つく。
ところがランサムウェアは「終わり」が見えない。攻撃が本当に止んだのか、再感染のリスクはないのか。企業も顧客も、誰も確信が持てない。この“終わりの見えなさ”こそが、企業の信頼を蝕(むしば)む。
欧州連合(EU)のサイバーセキュリティ機関ENISAが、2024年に公開したサイバー危機の管理に関するベストプラクティスをまとめた報告書「Best Practices for Cyber Crisis Management」と、コーネル大学が2024年に公開した、運営するデータ侵害時の危機コミュニケーション戦略を分析した論文「Crisis Communication in the Face of Data Breaches」を元に、「一般的な危機」と「ランサムの対応」の共通点と差異をまとめた。
この一覧からも分かる通り、ランサムウェアの広報対応は、一般危機(地震:自然災害、食品事故:健康リスク、製造トラブル:製品欠陥)と共通のフレームワークを共有しつつ、サイバー特有の複雑さ(データ漏洩(ろうえい)脅威、身代金倫理)が差異を生む。
研究では、全ての危機で「共感・正確・継続更新」の原則が有効であり、信頼回復率は、迅速開示で20〜30%向上するとされている。一般的な危機は「目に見える被害」(崩壊・中毒)で、即時謝罪が中心に対し、ランサム対応はサイバー専門広報チームの必要性が高いことが示されている。
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