「人材サービス」はなぜ信頼されないのか? 退職代行・偽装請負・闇バイトに共通する病理働き方の見取り図(3/3 ページ)

» 2025年11月10日 07時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]
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見過ごせない利用者側の問題も

 サービスを利用する企業や働き手側の姿勢にも問題があります。

 便利さを求めるあまり、不正な要望をしてしまうケースが見られます。偽装請負の横行も、職業紹介のお祝い金制度が悪用されたのも、それらを望むサービス利用者が存在したことが一因です。人材サービスを便利に利用し続けられるかどうかは、サービスを利用する側の姿勢にも大きく左右されます。

 しかし、不正な要望があってもサービスを提供する事業者が「NO!」と言えば済むことです。「利用者の要望だから」などと言い訳して受け入れてしまうのは、売上利益を追い求めるあまり、公益よりも私益を優先したからに他なりません。結果、監視や規制が強化されてサービスが使いづらい状況を招き、安心して利用できるという社会的信頼は得られていません。利用者のサービス悪用を止められず、事業者自らも悪用しているようでは当然です。

 悪用を防げないと、最終的には人材サービス自体が悪者と見なされてしまいます。それはサービスを提供する事業者自身による“人材サービス”への冒涜(ぼうとく)に他ならず、人材サービス業界が重ねてきた最大の罪ではないでしょうか。社会からの信頼を得られるかどうかは、人材サービス業界自身による自浄作用にかかっています。

著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)

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ワークスタイル研究家。1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者、業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員の他、経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声を調査。レポートは300本を超える。雇用労働分野に20年以上携わり、厚生労働省委託事業検討会委員等も務める。NHK「あさイチ」「クローズアップ現代」他メディア出演多数。

現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。


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