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富士通流「内蔵型コンサル」の挑戦 One Fujitsuの経営変革とは?(1/2 ページ)

» 2025年11月14日 09時00分 公開
[佐藤匡倫ITmedia]

 AIが経営や現場の意思決定に組み込まれ、業務効率化やサービスの高度化が加速している。その一方で、従来型のIT導入やシステム運用支援だけでは、顧客の企業競争力を抜本的に高めるには不十分だという危機感も強まっている。

 多くのITベンダーは、自社だけで顧客の経営変革を推進するには限界があると考え、外部の知見や人材を取り入れる仕組みを模索してきた。コンサルティング機能を分社化し、子会社に担わせる方法もその一つだ。子会社型のコンサルは、親会社のリソースを生かしつつ一定の中立性を担保できる利点があることから、これまで大手企業でも採用されてきた。

 富士通はこうした子会社としてRidgelinezを持ち、それに加え本体組織にコンサル機能を内蔵させる方向を選んだ。2024年2月に立ち上げたコンサルティング事業ブランド「Uvance Wayfinders」(ユーバンス ウェイファインダーズ)では、全社の力を束ねる“内蔵型コンサル”を掲げた。提言にとどまらず、構想から実行、そして継続的な取り組みへとつなげる伴走型の姿勢を明確に示している。

 6月に開催されたコンサルティング事業戦略説明会では、執行役員副社長CROの大西俊介氏に加え、Uvance Wayfindersの習田晋一郎氏(Global CEO & Senior Managing Partner)、工藤晶氏(Head of Japan, Managing Partner)、三原哲氏(Head of Global Technology Practice, Managing Partner)が登壇し、「内蔵型コンサル」の方向性を示した。同社はいかにして全社を動かし、事業変革を実現しようとしているのか。その戦略と実像に迫っていく。

「Uvance Wayfinders」では、全社の力を束ねる“内蔵型コンサル”を掲げた(以下、プレスリリース及び提供資料より)

経営と現場を直結 富士通流“内蔵型コンサル”とは?

 経営変革のスピードを決めるためには、構想から実装、そして運用までをどこまでシームレスに結びつけられるかが鍵だ。企業がコンサルティング機能を拡充していく方法としては、M&Aで既存のコンサルティングファームを買収する方法や子会社として独立したコンサル会社を設立する方法などが選択肢として挙げられる。

 実際、富士通も2020年にコンサルティング子会社Ridgelinezを設立し、中立性を担保しながらサービスを提供してきた。子会社型は親会社のリソースを生かしつつ、顧客に対して中立的な立場から最適なソリューションを提案できる利点がある。

 一方、同社が2024年2月に立ち上げたコンサルティング事業ブランド「Uvance Wayfinders」は、こうした子会社ではなく本体に統合した"内蔵型コンサル"として設計した。これは、フロント営業からソリューション、テクノロジーデリバリー、R&D(研究開発)まで、富士通のあらゆる機能を一体で連動させ、顧客に「One Fujitsu」として総合力を届けるための仕組みだ。

 大西氏は「富士通全社の取り組みとして、コンサルティングのケイパビリティ(企業が持つ組織力や強み)をグローバルで埋め込みたい」と語り、外部リソースの取り込みではなく、自社の約11万人の力を結集する姿勢を明確にした。実際、営業部門の社員が経営課題を基点に顧客役員層と議論できるよう教育プログラムを進めるなど、現場レベルでの意識改革とスキル変革も同時に走っている。

 内蔵型モデルは、ガバナンスの一体化と意思決定の迅速化を可能にし、経営と現場を同じ方向に動かす仕組みを実現する。例として、SEが単なるシステム導入支援ではなく、業務改革そのものに踏み込む仕組みも導入しているという。同社が持つテクノロジーと産業知見を、より早く顧客価値に直結できるように機能させるのが「内蔵型」の狙いだ。

多様な人材が集う、グローバル標準の組織戦略

 グローバル市場を見据える企業にとって、地域ごとに異なる組織文化やオペレーションが、変革の足かせになることも少なくない。Uvance Wayfindersが掲げる「True Global Team」は、こうした課題を解決する仕組みだ。世界中の拠点に共通の人事・採用・評価制度、そして統一のコンサルティングメソッドを導入することで、国や地域を超えて同じ品質のサービスを提供できる体制を整えている。

 人材面でも、コンサル出身者や事業会社でCIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)を務めた人材など、多様なバックグラウンドを持つ人材が加わりつつあると紹介した。すでに製造業や金融、エネルギー、自動車といった産業で複数のプロジェクトを始動しており、顧客に即応できる体制を構築している。

 習田氏は「富士通がこの5年間で進めた変革は、米国のどんな企業よりも速いと感じた。全社にコンサルティング能力を組み込むというミッションには大きな可能性がある」と語り、海外市場からも注目が高まっていることを強調した。採用活動の現場では「富士通が本気でコンサルに挑むなら参画したい」という声もあり、ブランドとしての期待感が高まっていることも裏付けられている。

グローバル×業界特化で動かす変革

 企業の課題は業界ごとに大きく異なり、制度や商習慣を踏まえなければ実効性を持たない。Uvance Wayfindersはこの点を踏まえ、業種ごとの深い知識を基盤に課題解決へと導く「Industry Expertise」をコアとした体制を敷いている。製造や金融、流通、公共、エネルギーといった主要セクターに深い知見を持つ専門チームを配置し、現場の業務プロセスから規制対応、社会課題までを理解した上で解決策を提示できるのが特徴だ。

 さらに、このIndustry Expertiseは、グローバルで共通化したTrue Global Teamと掛け合わせることで威力を増す。世界各地のコンサルタントが共通のメソッドと評価制度のもとで動き、業界ごとに培った知見を地域の枠を超えて共有できる。結果として、日本発の製造知見を海外で応用する、あるいは海外の公共部門改革の知見を国内プロジェクトに還元するといった、地域横断かつ業界特化の両面から変革を推進する仕組みを実現している。

フジトラ実践知が生む“他社にない顧客価値”

 顧客への提供価値をどのように高めていくか。鍵となるのは、富士通がここ5〜7年で取り組んできた全社的な変革の知見を体系化した「フジトラ」の実践知だ。習田氏は「富士通は自らの変革の経験を資産として整理し、お客さまの課題解決に適用していく」と述べ、他社事例の後追いではなく自社改革のリアルを生かす姿勢を示した。

 業務改革の現場に踏み込み、SE支援にとどまらず事業全体の変革を支援する姿勢、最先端技術を顧客課題に直接適用する実装力を強みとして挙げた。

従来型コンサルを超える包括的ケイパビリティ

 工藤氏は、Uvance Wayfindersが備えるケイパビリティの全体像を示した。中心に据えられるのは「Data & AI」であり、その基盤の上に「Industries」(業種別コンサルティング)「Experiences」(体験コンサルティング)「Operations」(オペレーション変革)「Technologies」(テクノロジーによる変革)の領域を組み合わせ、包括的に課題解決へつなげる構成だ。

 工藤氏は「製造業や金融など産業特化型の知見と、従業員・顧客の体験設計、テクノロジー基盤の刷新を組み合わせることで、持続的な企業変革を支える」と述べ、従来型コンサルが陥りがちな部分最適を超えて、エコシステム全体に踏み込む姿勢を強調した。

 この考え方は、製造業におけるデジタルツインの導入、DXとカルチャー変革の同時推進、インフラ提供を起点とした案件において、豊かで安全な持続可能な社会を実現していく「Trusted Society」構想など、実際のプロジェクトにも表れている。

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