土肥: トライセラ プロトのエンジン音を開発するにあたって、苦労したことはありますか?
田中: 個人的にオープンカーの音に携わったことがなかったので、どうすればいいのか、ちょっと迷いました。このクルマを試乗したところ、想定以上に「風切り音」(空気の流れが車体などにぶつかって発生する音のこと)を感じました。
クルマの特性を考えれば、風を強く感じたほうがいいのではないか。そのように考えて、風の音を強く感じられるようにしましたが、あまり強くすると、ドライバーの操作性が損なわれる可能性があるんですよね。例えば、アクセルを踏んでも、音が聞こえにくければ、運転の手応えやスピード感が損なわれてしまう。そうなってはいけないので、加速音を少し感じられるようにしました。
土肥: それはなかなか難しい問題ですね。オープンカーなので、多くのドライバーは風を感じながらハンドルを握りたいはず。しかし、風の音が大きすぎると、運転が難しくなる。ちょうどいい塩梅はどこか、その答えを見つける作業が続くというわけですね。
話は変わりますが、クルマのエンジン音づくりで難しい点はなんでしょうか?
田中: 人工的に音をつくっているので、ギミックらしさを感じてもらいたくないんですよね。「これってエンジン音だよね。えっ、違うの?」と錯覚してもらえるような音を開発できればと思っています。
ただ、デバイスの音は、どうしても本来の音とは違う。聞く人が聞けば「ギミック感があるよね」「やっぱり、人工的な音だよね」といった感想になる。かつて、ネット上で「フェイクサウンド」と呼ばれていました。いまは技術的な向上もあって、こうした声は少なくなってきましたが、個人的にはまだまだ満足していません。
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