カゴを置いた後の操作は、基本的にタブレット上で完結します。中央の「お会計をはじめる」を押すと、すぐに会員証のスキャン画面へ遷移します。
一般的なレジ体験では「ポイントカード/会員証はお持ちですか?」と確認した上で、「持っている/持っていない」を選択させるプロセスが挟まることが多いです。対してユニクロのレジ体験では、会員証を持っていることを前提に、即座にスキャン画面を提示します。「宣言→スキャン」という冗長な流れを省き、「持っている=スキャンする」というシンプルな行動モデルをそのままUIに落とし込んでいるのです。
もちろん、会員証を持っていないユーザーのことも想定しています。画面右下の「スキップ」を押せばそのまま次へ進めますし、スキャン画面が一瞬表示されても不快感は少ないでしょう。むしろユニクロのように日常的に使用することの多いブランドであれば、「せっかくだから登録してみよう」と考えるきっかけになる可能性すらあります。ここには、ユーザー体験と店舗メリットの双方に寄与する“良いデフォルト”設計が見て取れます。
さらにスキャン画面自体も工夫されています。単にカメラを起動するだけでなく、画面左にイメージ図、スキャンエリアの下にイラストを配置することで、初めてのユーザーでも直感的に操作方法を理解できるようになっています。こうした補助情報が「誰でも迷わず使える体験」を支えています。
次のステップは商品の読み取りです。先ほど述べたRFIDチップのおかげで、ユーザーは自分で商品のスキャンを行う必要はなく、システムが読み取った商品リストに誤りがないかを確認するだけで済みます。
私が特に優れていると感じたのは、この徹底した簡潔さです。一般的には「靴下を3点購入したのに2点しか読み取られなかった場合」に備えて、ユーザー自身が数量を修正できる画面を用意するなど、“柔軟性”を重視した設計が採用されがちです。
しかしユニクロはそのような機能を一切設けていません。その代わりに、スキャン精度を高めることで、ユーザーに無駄な操作をさせない体験を成立させています。これは「人間がやらなくてもいいことは徹底してさせない」という強い設計思想が感じられる部分です。「ソフトウェアで補う」のではなく「技術の質で解決する」視座の高さは参考になります。
また、ナビゲーションに関わるUIも丁寧です。ステップを進む・戻るボタンは矢印型で「時間軸の流れ」が視覚的に伝わりやすくなっています。さらに「やり直し」は過去に戻るのではなく“現在を繰り返す”操作であることを示すためにフラットな形状(アイコン)で表現されています。こうした細部へのこだわりによって、自然とユーザーが行動できるようになっています。
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