マーケティング・シンカ論

ガンダムは「複雑で初心者に不向き」なのに、なぜ新規ファンが増え続けるのかグッドパッチとUXの話をしようか(1/3 ページ)

» 2024年01月26日 08時30分 公開

連載:グッドパッチとUXの話をしようか

「あの商品はどうして人気?」「あのブームはなぜ起きた?」その裏側にはユーザーの心を掴む仕掛けがある──。この連載では、アプリやサービスのユーザー体験(UX)を考える専門家、グッドパッチのUXデザイナーが今話題のサービスやプロダクトをUXの視点で解説。マーケティングにも生きる、UXの心得をお届けします。

 2002年から2シーズンにわたって大人気を博したアニメシリーズ「ガンダムSEED」が、続編となる作品の映画化を発表したのは昨年の夏。心待ちにするファンの期待に応えるべく、1月26日に劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が公開されました。

1月26日に劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が公開された (C)創通・サンライズ

 アニメシリーズ終了から20年が経っているにもかかわらず、映画化決定の情報が解禁された直後から話題になり、公開に向けて盛り上がる様子は圧巻。ファンの冷めない熱を感じさせます。

 『機動戦士ガンダム』がテレビで初めて放映されたのは1979年。これまで数多の作品が出てきましたが、「ガンダム」というシリーズは、約半世紀にもわたって人気コンテンツであり続けています。

 ガンダムシリーズの人気については、これまで何度も語られてきましたが、今回は「ガンダム初心者」のUXデザイナーである筆者が、ガンダムの魅力や人気の秘訣をUX観点で考えてみようと思います。

「ユーザー体験」のセオリーから言えば、人気は出にくいはずだが……?

 ガンダムシリーズの魅力を語ろうと情報収集する中で、最も驚いたのはキャラクターや世界観の複雑さです。設定を解説する記事や動画はたくさんあり、見れば見るほど情報量が増えていくのです。

 筆者は仕事柄、日頃からさまざまなジャンルの情報を収集していますが、大抵はいくつか見ていくと「これはさっき見た」「ここの情報は重複している」といった要素が増えていきます。ガンダムにおいてはシリーズの多さも相まって、どれだけ情報を取り入れても終わりが見えませんでした。

 これまで本連載では、ユーザー体験を切り口にさまざまな人気サービスやコンテンツを読み解いてきましたが、ユーザー体験はユーザーにとって分かりやすければ分かりやすいほど、導入コストが減るため良いとされている、と解説していました。

 しかし、ガンダムシリーズで織りなされるストーリーは非常に複雑。はっきり言ってしまえば「初心者向き」ではありません。それなのになぜ、幅広い世代や属性の人から人気を集めているのでしょうか。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.