2023年3月に誕生した、「北海道ボールパークFビレッジ」(以下、Fビレッジ)。約32ヘクタールの敷地に、プロ野球、北海道日本ハムファイターズ(以下、ファイターズ)の新しい本拠地である「エスコンフィールドHOKKAIDO」を中心に、子どもの遊び場やキャンプ場にドッグラン、天然温泉・サウナやレストランなど、多種多様な商業・エンターテインメント施設が立ち並ぶ。野球ファンのみならず、誰もが一日中楽しめる場所だ。
参考:「俺、今日12時間ここにいるよ」 エスコンが破壊した野球場の既成概念
ファイターズ スポーツ&エンターテイメントはFビレッジの来場者向けに「北海道ボールパーク Fビレッジ公式アプリ」を提供。顧客データの活用で、さらなる来場者増、ファン獲得に励んでいる。
同アプリには、広大な敷地をスムーズに探索するための「エリアマップ」、試合のチケットの購入や宿泊先や駐車場の予約ができる「本日の予約/チケット」、Fビレッジ内の施設利用や飲食でたまる「Fマイル」や「クーポン」の獲得・利用、試合結果やキャンプの予定、選手の誕生日などをチェックできる「カレンダー」、来場特典などを受け取れる「チェックインチャレンジ」といった機能がある。
しかし、単に充実した機能だけがFビレッジ公式アプリの魅力ではない。顧客エンゲージメントプラットフォーム「Braze」と裏側で連携し、一人一人に最適な顧客体験を、リアルタイムで提供しているのだ。
同社はどんな思いで、どのような施策を打ち、何を届けることで、ファンを熱狂させているのか。ファンダムマーケティングの神髄に迫る。
この記事は、Braze社のグローバルイベント「Braze City x City Tokyo 〜デジタル・ボディランゲージ x AI で実現する次世代CX〜」のセッションをもとに紹介する。
ファイターズが大切にしているのは、「顧客に正対すること」。逃げたりはぐらかしたりせずに、真正面から顧客と真摯(しんし)に向き合う。
来場者に対して運営側のルールを一方的に押し付けるのではなく、まずは顧客の声に耳を傾け、変えるべきところは柔軟に変えていく。「この信念がなければ、どんなに優れたシステムを導入しても宝の持ち腐れとなり、決してファンのエンゲージメントを高めることはできない」と強調するのは、Fビレッジの仕掛け人であり、ファイターズ スポーツ&エンターテイメント(以下、FSE)常務取締役 開発本部長の前沢賢氏だ。
この思想は、今年の組織改変で設立された「顧客マーケティンググループ」の名にも表れている。同じマーケティング組織でも、新規顧客獲得を目的とした広告出稿などの施策を担う「プロモーショングループ」とは明確に切り分けられ、「顧客マーケティンググループ」では顧客との長期的な関係構築のためにCRMやアプリなどを用いたファンダムマーケティングを担う。
同グループでは、2023年にBrazeを導入。Fビレッジ公式アプリから取得した顧客情報をマルチチャネルで生かしながら、さまざまな1to1コミュニケーションを実現している。FSE コンシューマー統括部 マーケティング部 部長の田邊朋哉氏は、実例として次の4つを紹介した。
Fビレッジアプリの会員登録時に、応援している球団を尋ねるアンケートを実施。「F VILLAGE アカウント」(独自ID)ごとに趣味・嗜好に関する属性データを取得している。
例えば、そこでA球団の名を挙げた人には、「次のA球団との交流試合は◯月△日、すぐにチケットを購入できます」と案内を送信。一方で、応援球団の属性データと過去の来場履歴のデータを掛け合わせ、たまたまA球団の試合を観戦しただけだと判断できるファイターズファンには、A球団をフックとした案内を送らないよう配慮している。
「チェックインチャレンジ」(来場登録)ボタンも搭載する。球場を訪れた際にチェックインすると、毎月抽選で景品が当たるほか、過去の来場履歴を振り返ることもできる。2025年には過去最高記録となる1試合あたり約1万4000回のチェックインを達成した。
チェックインチャレンジに参加すると、ホーム戦勝利後に限定販売されるファイターズの公式キャラクター「VICTORYしゃけまる」のぬいぐるみか、サブレの購入クーポンが当たる抽選に応募することができる。Brazeによって「応募受付→自動抽選→当選通知」までアプリ内で完結しており、来場中の顧客体験向上施策にも力を入れる。
デーゲームの試合終了後に「しゃけまる放流」という来場者参加型のゲームを実施。LINEのミニアプリと連携しており、利用者はLINE上で画面をタップすると、大型ビジョンにしゃけまるを放流できる仕組み。合計放流数が増えるとプレゼントの当選数も増える。
「ファンのエンゲージメントを高めるには、球場というリアルの場で体験してもらうことが何よりも大事。エスコンフィールドができる前のわれわれは“野球屋さん”だったが、今は“エンタメ屋さん”だと自負している」(田邊氏)
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