パチンコチェーンのマルハン東日本カンパニーは11月26日から12月7日まで、東京・大田区の銭湯を期間限定で改装し、“イキすぎた光と狂気のNEW浴体験”をテーマにした「脳汁銭湯(のうじるせんとう)2025」を開催中だ(12月1日、4日は休館)。
会場はJR蒲田駅から歩いて10分ほどにある「女塚温泉 改正湯」。浴場にある鯉の水槽でも知られる創業100年近い老舗が、期間限定で刺激たっぷりなサイバー空間に変貌する。
2024年に続き2回目の開催。前回はSNSを中心に話題となり、10日間で約4500人が訪れた。最大90分の行列ができることもあったという。マルハンが老舗銭湯とコラボした理由を追った。
メディア体験会で通された浴場はほの暗く、富士山が描かれた壁には“クセ強め”のプロジェクションマッピングが流れていた。映像に合わせて洗い場があやしく光り輝く。
洗い場をパチンコ台に見立てた演出だといい、風呂桶はドル箱風になっている。名物の水槽には「魚群襲来」などの表示も。
定期的にある“フィーバータイム”中、3つある浴槽の真ん中から噴水が出る。右隣の浴槽には、アヒルのおもちゃがびっしりと浮かべられており、左隣の浴槽からは声優の“イケボ”が流れるのだとか。
「パチンコの魅力でもある、光や音などを取り入れて、五感を揺さぶる仕掛けを詰め込んでみました」
こう語るのは、プロジェクト責任者を務めるマルハン東日本カンパニーの仲奈稚さん。人気クリエイターのアフロマンスさんらとコラボして、ロッカーに「当たり」を仕掛けたり、扇風機を止めると羽根の位置でおみくじが引けたりと随所に遊び心を取り入れた。
「前回は途中から女性のお客さんが増えたんですが、髪を乾かす時間の分、行列ができてしまったので、今回はドライヤーを増やしました。ただ増やしても面白くないので、“しゃべるドライヤー”にしています」とパワーアップを強調する。
改正湯を経営する小林千加史さんは、「大人が真剣にふざける文化祭」と表現する。
「待ち時間が長いので、常連さんには頭を下げて、期間中は他の銭湯にまわってもらっています。大田区は銭湯が多いので、こういう助け合いができる」
「このままではいけない、銭湯を若い世代に知ってもらいたいという気持ちがあって、これまでもいろんな企画をやってきました。どこかで限界に挑戦してみたいと思ってコラボしました」
手間もお金もかかった企画で、設営のためイベント前後は休業になる。料金を上乗せしても良さそうなものだが、金額は通常どおりだ。
というのも、スーパー銭湯と異なり、一般銭湯は現在も唯一残る「物価統制令」の対象。料金は都道府県知事に委ねられ、設備にも細かな基準がある。それらを守りながら、いかに面白い企画にできるかという制約が、むしろクリエイティブにつながっているのだ。
しかし、なぜパチンコチェーンのコラボ相手が銭湯なのか。
パチンコ業界は苦境を迎えている。帝国データバンクによると、2024年のパチンコホール経営法人数は1201社で、売り上げは11兆7133億円。いずれも10年前から50%前後減っている。
こうした中、マルハンではリブランディングの一環として、「偏愛」や「脳汁」をテーマにした「ヲトナ基地」プロジェクトを展開している。脳汁銭湯もその1つだ。
マルハンの仲さんは次のように説明する。
「新しいファンを作り上げていくためにどうすればいいのか。世の中の変化や人々の気持ちを丁寧に追いかけながら、われわれが提供すべき価値を再確認しようということでスタートしました」
「多くの人が余暇に『自分の好きな時間をもっと大切にしたい』『没入できる時間を何よりも重視したい』ということを求めている。その気持ちにまっすぐ応えるため、五感を大胆に刺激して、思わず『やばい』や『面白い』といった声が出るような体験を企画しています」
「脳汁銭湯」は若者の間でサウナや銭湯がブームになっていることから思い付いたという。
「パチンコとサウナって近いと思うんですよ。どちらも刺激に身を置いている。マルハンのエリア長にもサウナ好きは多いんです(笑)」
改正湯にはサウナこそないが、黒湯天然温泉と炭酸泉をミックスした湯や魚の水槽を取り入れるなど、老舗でありながら新しい“刺激”を取り入れてきた銭湯でもある。
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