そのようなドメスティックな文化である時代劇に、デスゲーム要素を取り入れることでグローバルな大衆性を付与している点も実に巧みである。特に近年のNetflixは、デスゲームものが好調だ。
Netflix史上最大のヒットといわれた韓国発の『イカゲーム』や、今秋公開されたシーズン3が世界ランキング1位となった『今際の国のアリス』は、いずれもこのジャンルである。
人を引き付けるフォーマットであることに加え、“アジア発のデスゲーム”熱が高まっているタイミングでの新作登場という流れもあり、海外ユーザーは親しみやすさを覚えたのではないだろうか。
実際、米エンターテインメントメディア「VARIETY」は、「Shogun Meets Squid Game(イカゲーム)」と、本作のデスゲーム要素を『イカゲーム』に例えて報じている。配信が始まって2週目以降も止まらない『イクサガミ』の加速力は、そうした文脈も含めて納得がいく。
だがここまでは、原作から引き継いだ魅力ともいえる。では、とりわけ今回の実写版を成功に導いたものは一体何か。キャストやクリエイターの技量を、余すことなく作品の質に反映させるNetflixの英断が、その陰にはある。
本作を語る上で欠かせないのが、主演、プロデューサー、アクションプランナーの3役を務めた岡田准一さんの存在だ。彼のプロデューサー抜擢は、Netflix側からのオファーが起点である。
岡田さんと言えばこれまで『燃えよ剣』『散り桜』『関ヶ原』など、数々の時代劇映画で主演を務めてきた俳優だ。時代劇の継承に並々ならぬ思いがあり、かつ格闘技や武術に造詣が深いことでも知られている。岡田さんのキャリアと『イクサガミ』は、これ以上ないほど親和性がある。
本作で彼は脚本や編集の監修、殺陣の構成にまで幅広く携わっているという。特に黒澤映画へのオマージュを滲(にじ)ませたという殺陣は、その豊富な現場経験がなければ実現しなかっただろう。プロジェクトと共鳴する人物を作品の中核に迎えた選択が、実写版のクオリティを形づくっている。
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