Netflixで話題沸騰『イクサガミ』 世界1位の大ヒットになったワケ(3/4 ページ)

» 2025年12月04日 08時00分 公開
[白川穂先ITmedia]

「画面が暗い」 それでも、マイナスにならない訳

 また、そんな岡田さんから指名を受けメガホンを取ったのが『正体』『新聞記者』などの藤井道人監督だ。手掛ける作品の幅が広い藤井監督だが、特に『ヤクザと家族 The Family』『ヴィレッジ』『最後まで行く』などで垣間見えたような、スリリングでダークな映像美が『イクサガミ』でも光っている。

 例えば、物語の序盤は、時代設定も相まって薄暗い場面が続く。中には目をこらすほど視認性が低く思えるシーンもあるが、そのような徹底された画作りが、時代劇としての独特のリアリティにつながっている。

物語の序盤は薄暗いシーンが続く。画像は主人公が第一のゲーム会場に集められたシーン(画像:プレスリリースより)

 そんな映像を観ていて思い出すのは、『今際の国のアリス』の佐藤信介監督が作品制作時を振り返って語ったこのような発言だ(参照:AV Watch「『地面師たち』監督らが振り返るNetflixでの挑戦。山田孝之はギャラアップを直談判」)。

「なんとなく(従来の作品で)あったのは、『なるべく画面は明るめにして分かりやすくしよう』ということをプロデューサーからよく言われていましたが、(Netflixでは)逆に『画面はダークにして、ちょっと分かりにくくてもいいからルック・トーンを上質にしたい』と言われます。僕たちは、つねづねそうしたいと思っていたので、話しやすい人が映画・ドラマづくりを始めてくれたなと感じましたね」

 『イクサガミ』でも恐らく、同様のやり取りが交わされた上での判断なのではないだろうか。そのように、ある種のリスクを取ってでも作品のクオリティを追求するという選択の一つ一つが、本作のクリエイティブを支え、異例のヒットにまでつながっている。

著者紹介:白川穂先

エンタメ企業と編集プロダクションで編集・取材・執筆を経験し、個人で執筆活動。ドラマ、映画、アニメなどエンタメ記事の企画・執筆を幅広く行っている。1994年生まれ、北海道出身。


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