リテール大革命

「決算に誤り」の危機も救った ツルハHD“たった一人”の非デジタル人材が進めたDXの軌跡(2/3 ページ)

» 2025年12月05日 06時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]

どうやってデータを整備したのか

 ツルハHDは、ドラッグストアの他に調剤薬局も運営する。ドラッグストア内に調剤薬局を併設する店舗もある。

 また、ドラッグストアだけだった店に調剤薬局を併設するなど、オープン後に業態を変える店舗もあるため、「店舗の業態の変更や追加に柔軟かつシームレスに対応できる仕組みが求められた」と若林氏は振り返る。

さまざまな業態 ツルハホールディングスが運営する店舗は1業態だけではなく、しかも業態が入れ替えることもあるなど、マスタを作るにしては複雑である(提供:ドリーム・アーツ、以下同)

 そこで開発したのが、親子別のデータベースからなる店舗マスタアプリだ。

 店舗名や電話番号、住所といった店舗ごとの基本情報は“親”データベースである「基本DB」に、業態区分など業態に関する情報は“子”データベースの「運営情報DB」に格納した。運営情報DBにある基本情報は自動連携する仕組みだ。

親子 親子データベースに分けることで、柔軟性を高めた

 途中で業態が変わる場合は「文書改定申請」アプリで申請するようルール化した。アプリで申請した内容が承認を経ることで、変更箇所が基本DBと運営情報DBに反映される。

申請アプリ 申請アプリを作ることで、データ変更時の透明性を高めた

 「作成したデータベースは、全社で唯一信頼できる店舗マスタデータ──“神様データ”となった」と若林氏。

 「当初は、自分の業務効率化のために始めた店舗マスタデータの整備だったが、正確な情報が格納されていることもあり、『〇〇エリアの、店舗併設の調剤薬局はいつ開店する?』といった問い合わせが来るなど、次第に社内へと広がって重宝されるようになっていった」(若林氏)

 当時の上長であった経営戦略本部 経営企画部部長 河原高志氏は動画インタビューの中で、「店舗データがExcelで管理されていることに驚いたが、それが10人10様のルールで作られていた。IR部門ですら、他部署のデータを見て答え合わせをしているような状態だった。いつかは店舗情報をまとめて、全体の最適解として構築しなければならないと考えていたので、彼(若林氏)の取り組みには期待していた」と語った。

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