こうした日常カテゴリーでの浸透を支えているのが、タッチ決済対応カードの圧倒的な普及だ。2025年9月末時点で、日本国内のタッチ決済対応Visaカード発行枚数は約1億6000万枚に達した。対面決済におけるタッチ決済の普及率は約6割。2019年にはほぼゼロだったことを考えれば、急速な普及だ。
カテゴリー別に見ても成長は著しい。2023年以降、コンビニエンスストアでの取引数は2.2倍、飲食店では約4倍、ドラッグストアでは5.5倍、スーパーマーケットでは3.2倍に増加した。インフラは整い、利用は急拡大している。
しかし、Visaは別の課題に直面していた。
「Visaのカードを持っている消費者でも、それを好ましい決済方法として日常的に使っていない方が多くいた」とキトニー氏は振り返る。「単なる習慣であったり、ブランドに対する認知不足であったり、特定の特典があると思い込んでいたりして、Visaの商品を扱っている加盟店であっても現金を使ってしまう」
カードは持っている。店も対応している。それでも使わない。これが「習慣の壁」だった。
この壁を突破するため、Visaは2024年4月、大阪で実証実験を開始した。「大阪エリア振興プロジェクト」と名付けられたこの取り組みでは、スーパーマーケット、ファストフード店、ファミリーレストラン、地下街などの身近な加盟店で「Visa割」という割引キャンペーンを展開。インセンティブによって「最初の一歩」を踏み出させる設計だった。
結果は数字に表れた。2024年4月から2025年9月の間に、大阪府内でVisaタッチ決済の利用者は180万人以上増加。同地域のタッチ決済普及率は74%と、全国平均の66%を大きく上回った。さらに、大阪でのタッチ決済対応アクティブVisaカードの枚数は同期間で100%超増加し、全国平均の60%増を大きくリードした。
「消費者の習慣的なやり方から一歩踏み出し、あらゆる場所で頻繁にVisaを使うという新しい習慣を作ることができた」とキトニー氏は成果を振り返る。
成功の鍵は3つの施策の組み合わせだった。インセンティブで最初の一歩を促し、コミュニケーションで認知を高め、インフラ整備で「使える場所」を増やす。この組み合わせが、習慣の壁を突破した。
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