大阪での成功を受け、Visaは2026年2月から「タッチ決済全国キャッシュレス推進プロジェクト」を始動する。大阪で検証した成功モデルを日本全国に展開し、シームレスで安全、便利なキャッシュレス決済体験を提供する計画だ。
「パートナーの皆さまと手を組んで、2026年度以降も全国で数百万ドル規模の投資を行っていく」とキトニー氏は語る。手応えを感じており、「これを日本全国に広げていくことを楽しみにしている」という。
全国展開で特に重点を置くのが、モバイルタッチ決済だ。物理的なカードではなく、スマートフォンやスマートウォッチでのタッチ決済の普及を加速させる。
現時点でのモバイルタッチ決済の利用比率について、キトニー氏は具体的な数字の開示を避けたが、「かなり急速に伸びている」と強調する。「Visaにとって、タッチ決済を進める上でも優先事項が高いものになっている」と明言した。
なぜモバイルなのか。背景には次世代コマースへの布石がある。
「Visaの決済認証情報をモバイルに搭載してもらうことによって、新しい先進的なコマースが可能になっていく」とキトニー氏。AI主導の「エージェンティック・コマース」――インテリジェントなエージェントが消費者の好みに基づいてパーソナライズされた提案を行い、さらには消費者に代わって購入や支払いを開始する世界。その入り口がモバイル決済だという。
2026年、Visaが仕掛けるのは対面決済だけではない。「オンライン」「法人向け」という、もう一つの戦線が本格化する。
ECサイトでの決済体験を変えるのが「Click to Pay」(クリック・トゥ・ペイ)だ。カード番号を手入力せず、数クリックで支払いを完了できるこのサービスには、すでに18社のカード会社と5社の決済代行会社が参画を表明している。
「すでにライブ(稼働中)の状態にある。消費者はクリック・トゥ・ペイの登録を始めており、登録された消費者による取引も徐々に始まっている」(キトニー氏)
セキュリティの基盤はトークン化だ。16桁のカード番号を暗号化されたトークンに置き換えることで、データ漏洩(ろうえい)や不正利用のリスクを大幅に減らす。さらに、Visaパスキーという生体認証技術を組み合わせることで、ワンタイムパスワードのような手間をかけずに高いセキュリティを実現する。
一方、より大きな成長余地があるのがBtoB決済だ。日本企業の企業間取引におけるカード決済の普及率は、わずか0.7%。韓国の4.4%、米国の3.3%と比較して著しく低い。
「手数料がかからない」という理由で銀行振込を選ぶ企業は多い。しかし、Visaの調査は別の現実を示す。請求書発行、消込作業、貸倒リスク、延滞債権の回収――。こうした隠れたコストを合計すると、銀行振込には「売上高の4.7%」に相当するコストが潜んでいるという。
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逆に、カード決済を受け入れるサプライヤーは、貸倒リスクの低減、早期現金化による資金調達コストの削減、業務効率化などにより、「総売上の5.7%」に相当する財務的利益を得られる可能性がある。たとえば年商5億円の中堅企業が全取引をカード化すれば、約2850万円の利益増加が期待できる計算だ。
「消費者向けではキャッシュレスが進んだが、法人分野は明らかに遅れている。ここに力を入れていく」(キトニー氏)
2025年は「移動」が「消費」を変えた年だった。公共交通でのタッチ決済が、コンビニやレストランでの支払い習慣を変え、大阪では180万人の行動変容を実証した。
そして2026年は、キャッシュレスの領域がさらに広がる。対面からモバイルへ、オンラインへ、そして消費者から法人へ。「消費者がVisaを、より多くのデジタル決済を、より頻繁に、あらゆる場所で使うようになる」――。Visaが描くキャッシュレスの拡張は、2026年に一段と加速していきそうだ。
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