生成AI活用によるDX推進の本質「現場の内発的動機と経営のエンパワーメントの融合」
【開催期間】2026年1月27日(火)〜2月25日(水)
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【概要】生成AIの普及が急速に進む中で、業務変革や事業成長に活かすことは難しいという声を耳にすることが多くなりました。企業のDX化のカギは、経営と現場の両輪で取り組むことです。オムロンでは現場の内発的動機を経営のエンパワーメントによって昇華させ、実践的な生成AI活用のプロジェクトを全社横断で推し進めています。“オムロン流”の生成AI活用の取り組みについて解説します。
生成AIの全社導入において、多くの企業が直面するのが「初期の熱狂後の停滞」だ。
ファッションEC「ZOZOTOWN」などを手掛けるZOZOも例外ではなく、当初34%だった利用率は78.8%まで伸ばしたものの、さらに伸ばすための施策を検討していた。この壁を突破するため、同社が投じた策は極めてユニークだ。役員を含む全社員1700人を165のチームに分け、「野球のリーグ戦」形式で自作GPTの利用率を競わせる生成AIコンテスト「ZOZO GPTs LEAGUE」である。
この徹底したゲーミフィケーションの結果、利用率は短期間で95%にまで到達した。単なる「ツール配布」に終わらせず、いかにして社員を「本気」にさせたのか。その裏側には、技術とデザインの力を融合させた、緻密な組織戦略があった。
AI・アナリティクス本部の発起人であり、コンテストの企画・担当者でもある牧野洋平氏と、普段はイベントの企画やデザインなど、社員のコミュニケーションの醸成に取り組む田口貴士氏に、コンテストの詳細に加えて工夫や苦労を聞いた。
今回開催したコンテスト「ZOZO GPTs LEAGUE」が奏功した背景には、2017年からの地道な土壌作りがある。ZOZOは2017年、各事業のデータ分析、データマネジメントを横断的に担う部門を立ち上げた。現在はAI・アナリティクス本部として社内における生成AIなどの積極活用と、業務の質向上や効率化を目指している。
2023年春には「生成AI活用推進プロジェクト」を立ち上げ、ビジネス部門でも活用を本格化。全社員を対象とした生成AI研修も実施した。その結果、当初34.0%だった「週に1度でも生成AIを利用する社員」の割合を、78.8%までに増やした経緯がある。
2025年の8月には、目的別にオリジナルのChatGPT、GPTs(カスタムGPT)を簡単に作れる機能を備えた、法人向けの最上位プラン「ChatGPT Enterprise」をグループ全社員が使える体制を整えた。さまざまな施策が奏功して、全社横断のAI活用を促進した形だ。
そして今回の「ZOZO GPTs LEAGUE」を開催。全社員約1700人を6つのリーグ、それぞれ10〜15人ほどの165チームに分け、チーム対抗でどれだけ多くの人に利用されるカスタムGPTを作れるかを、2カ月間にわたり競い合った。
予選リーグは8月に始まり、9月の頭に中間発表をした。そこでの成績により各リーグの上位1チームが決勝リーグに進める。
「チームの分け方は普段、一緒に仕事をしている部署や課単位にしました。日頃から頻繁に生成AIを使っているエンジニアなどが集まるリーグと、これまで業務では頻繁に使ってこなかった社員が集まるリーグを分けることで、どのチームも平等に決勝リーグに進めるように配慮しました」(牧野氏)
リーグはレッド、グリーン、ブルーなどに分けられ、チームにより若干人数が異なるため、判定方法もMAU(Monthly Active Users)をチームの人数で割った数字とすることで、公平性を担保した。決勝リーグも同じく1カ月間。最終的な優勝チームは10月の頭に決まり、順位により額が異なる奨励金も設けた。
このスライドを見て分かる通り、かなりイベント感が強い。デザインも凝っている。なぜ、このような斬新かつ秀逸なアイデアを出せたのか。担当した田口氏はもともとUI/UXデザインなどを手掛けていた。現在はそのようなデザインの力も活用し、社内のコミュニケーションの醸成などに取り組む。このイベントに多くの社員を巻き込めたのも、田口氏の存在が大きい。
田口氏は普段から、会社の総会であってもそれを単なる発表の場としてだけではなく「どうしたら社員の多くが興味を持ってくれるか」を考え、実際にそのような場をデザインしてきた。例えば「総会の冒頭で役員がテレビ番組で行っているような、ユニークなネタにトライする」といったアイデアなどである。
このような取り組みを知っていた牧野氏は、企画の段階から田口氏に相談を持ちかけ、今まで以上に全社員が生成AIを使ってくれるようなイベントを一緒に考えていく。そうして出来上がったのが、今回のコンテストというわけだ。
「楽しそう、やってみたい。まずはそう思ってもらえる、お祭り的なイベントであることを心がけました。そのような雰囲気が伝わるようなデザインや、見せ方も意識しました。どうしてもAIを、苦手に捉える人がいますからね」(田口氏)
まさにデザイナーが得意とするスキルを生かして作ったのが、先のイベントを告知するアイキャッチ画像というわけだ。野球を選んだのは好きな社員が多いとの理由から。よく見ると牧野氏に似た人物がピッチャーで、澤田宏太郎社長に似たキャラクターもバッターとして登場していた。澤田社長はトレードマークでもあるツンと立った髪型がヘルメットになっているというユーモアがありつつ、細部にもこだわりを見せている。
こちらの画像も、生成AIによって作成したものだという。さらにはチーム名とコンセプトを入力すると、その内容に合わせた本格的なロゴが出力されるカスタムGPTも作成し、社員に紹介した。
「運営側が本気で取り組んでいる姿勢を見せることも重要です。そもそも社員は通常業務で忙しいですから、片手間的な取り組みでは、あえて時間を設けてやろうとはしてくれません。ガチで、全力でコミットすることを企画段階から心がけました」(牧野氏)
このような姿勢は田口氏も同様であり、楽しいイベントの裏にはそのような2人の真剣かつ、まさに“ガチな意気込み”が大きいと言えるだろう。そのため経営層とも意見交換をし、経営陣も牧野氏・田口氏も、それぞれ所属する部門でイベントに参加している。
経営陣チームは中間発表まではトップ争いを繰り広げていたそうだ。澤田社長がコンサルティング会社出身の強みを生かして、ロジカルシンキング養成ツール的なカスタムGPTを、バージョン2まで作成したとのことだ。
一方で、自由参加だったこともあり特に最初のころは、着手していない社員も少なくなかったという。そこで2人はさらに本気度を見せる。先のチーム名やロゴを運営側が作成し、その内容とあわせて、あらためてイベントへの参加を促したのだ。
参加者が増え、イベントが盛り上がりを見せるようになってからも、2人のガチな取り組みは続く。Slackで順位などを定期的にアナウンスしたり、順位が低いチームのメンバーでも意欲が出るよう、ルーキーズカップや巻き返しカップといった、リーグ戦とは別のカップ戦も開催したりした。
このような告知でも、細部へのこだわりを見せる。牧野氏はスコアラー、田口氏はボールボーイという立ち位置で、まさにイベントの世界観に入り込み、かつ裏方として皆をサポートしていること、祭りを盛り上げていることを伝えていった。
このようなイベントを開催すると、エンジニアチームが有利ではないかと多くの人が思うだろう。実際、エンジニアチームは優勝争いに絡んだ一方、最終的に優勝したのは物流部門のチームだった。
「物流部門のメンバーはふだんから改善意識が高いので、そのようなマインドが結果として多くのカスタムGPTの制作ならびに、利用につながったのだと推測しています」(牧野氏)
注目すべきは、自分たちのドメイン業務を効率化するカスタムGPTだけでなく、メールのやり取りなど汎用的な業務の効率化や改善に関するカスタムGPTも作成したことだ。
つまり、業務をいかに効率化したり改善したりするかといったマインドがあれば、部門やスキルに関係なく、生成AIの活用は推進できる、ということになる。
具体的には、業務の改善に向けた壁打ち用のカスタムGPTや、評価時期と重なったこともあって評価業務を効率化するもの、さらには人事施策のサポートに寄与するものなど、全社員が利用対象者になりうるカスタムGPTが作成されたという。
他にも契約開始から請求まで一気通貫でサポートするもの、どの社内ワークフローを使えばよいかや、契約書のひな形探しなどをサポートするもの、商談タスクを整理するもの、AI活用レベルを診断し、レベルに応じた実践的なAI活用方法・開発アイデアを提案するものが開発された。
こうした結果、めざましい成果があがった。
コンテスト最中の9月に実施した生成AIの利用率を調べた調査結果では、「因果関係は分からない」と牧野氏は謙遜するものの、前回のリサーチから大幅に増加した95%という結果となった。しかも前回低かった部門でも軒並み90%以上となっており、全社員の生成AI活用レベルの底上げにつながったのである。
今後は残り5%の層にも生成AIを使ってもらうように働きかけたり、すでに使っている層の活用方法をブラッシュアップしたりすることも計画しているそうだ。すでに、ある部門では業務を棚卸し、AIでどこまでできるかを実証しているという。
「普及はできたと考えていますが、AIでできる部分はまだまだあります。そのことをこれからも全社員に伝えていくことで、一人一人の仕事の質と効率が高まると考えています。そのためには引き続き成功事例を数多く作り、それを発信したり共有したりする取り組みなどを手掛けていきたいと考えています」(牧野氏)
【イベント情報】生成AI活用によるDX推進の本質
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