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「管理職罰ゲーム化」を防ぐ? AI活用できるマネジャーと活用できないマネジャーの違いAI活用が「管理職罰ゲーム」化を防ぐ【前編】

» 2026年01月16日 07時00分 公開
[藤田理孝ITmedia]

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生成AI活用によるDX推進の本質「現場の内発的動機と経営のエンパワーメントの融合」

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【概要】生成AIの普及が急速に進む中で、業務変革や事業成長に活かすことは難しいという声を耳にすることが多くなりました。企業のDX化のカギは、経営と現場の両輪で取り組むことです。オムロンでは現場の内発的動機を経営のエンパワーメントによって昇華させ、実践的な生成AI活用のプロジェクトを全社横断で推し進めています。“オムロン流”の生成AI活用の取り組みについて解説します。

 日本企業における生成AIの導入率は6割を超え、資料作成や議事録作成などさまざまな業務で使われるようになりました。多くの職場でも「生成AIを使ってみる」段階から「生成AIで成果を出す」段階への移行が求められています。

 一方で、生成AIの活用度にはばらつきが生じています。ある調査では、意思決定層の約7割が「生成AIを十分に活用できている」と感じている一方、一般社員では約4割にとどまり、活用実感に大きなギャップが生まれています。

 ギャップを解消するための鍵を握るのが現場のマネジャーです。業務プロセスや判断基準を設計するマネジャーの関与度合いが、現場でAIが活用されるかどうかを大きく左右します。米国での調査でも、上司が生成AIの活用を強く推奨することで、メンバーの活用度が2倍に高まり、有用性を6倍感じるという結果も出ています。

 では、生成AIを使って成果を出せるマネジャーと、そうでないマネジャーの違いは何なのでしょうか。

photo 生成AIを使って成果を出せるマネジャーと、そうでないマネジャーの違いは?(写真提供:ゲッティイメージズ)

「忙しいマネジャー」から抜け出すカギは”事前対応”

 成果を出せるマネジャーと、そうでないマネジャーの「違い」を議論する前に、マネジャーを取り巻く現状を考えてみましょう。

 日本企業では、マネジャーに対する期待や対応すべき業務が増えており、多忙なマネジャーが多いのが現状です。忙しい状況下で、少しでもマネジャーの対応が後手に回ると、対応にかかる工数はさらに増え、状況がどんどん悪化してしまいます。

 プロジェクトマネジメントの研究でも、トラブルなどが起きた際、時間が経てば経つほど、対応にかかる工数は指数関数的に増えることが報告されています。アウトプットを確認したときに、認識がズレていることを検知する、トラブルが起きた後に対処する、といったことが続けば、多忙なマネジャーの時間はさらに奪われていくのです。

 だからこそ、現場での生成AI活用を議論する前に、多忙なマネジャーの対応が後手に回る状況を解消することが必要です。そのために重要なのは、問題が起きる前の段階でズレや無駄が生まれにくいように業務を設計する「事前対応」です。例えば、メンバーが仕事に取り掛かる前に具体的な計画を共有するなど、事前に判断基準を示しておくことで、認識のズレを減らすことができ、結果として想定外の事態も起こりにくくなります。

「事前対応」はAI活用でも効果的

 実は、この「事前対応」は生成AIの活用にこそ重要です。

 生成AIを使ってみた際に、期待したアウトプットが出ずに活用を諦めた、という方もいるかもしれません。生成AIは高い情報処理能力を持つ一方、大量の情報を丸投げするような指示では、何度フィードバックをしても思ったような回答を出せないことが多くあります。

 生成AIによるアウトプットの質を高めるためには、生成AIに「何を実行させるのか」を整理することが重要です。具体的には、指示文によって実行内容を明確化することに加え、作業の順番や判断基準、それぞれの作業ごとに参照する情報などを整理することが求められます。指示も含めた事前の設計は“コンテキストエンジニアリング”と呼ばれており、生成AIが出力するアウトプットの質を大きく左右する考え方として知られています。

 「雑な指示」によって、アウトプットの質が低下するのは、AIもメンバーも同様です。つまり、「現場でAIの活用が進まない」という問題と「マネジャーが多忙で機能しない」という問題が起きている原因は共通しており、どちらも「事前対応力を高めること」が解決の鍵なのです。

事前対応力を高めるためには、「ローコンテクスト化」が重要

 では、「事前対応力」を高めるためには、何が必要なのでしょうか。

 まず見直すべきは、「言わなくても分かってくれるはず」と無意識に思い込んでいないかということです。日々の判断や指示を重ねる中で、マネジャーの中には判断基準や思考プロセスが暗黙知として蓄積されます。しかし、その暗黙知はなかなか他者には伝わりません。他者に伝わっていない状態でハイコンテクストなコミュニケーションをとってしまうと、認識のズレが生まれ、結果として手戻りや追加対応が発生してしまいます。

 だからこそ、マネジャーには自身の判断基準や考え方を「ローコンテクスト化」することが求められます。普段どのような情報を参照して判断しているのか、どのような思考プロセスで結論に至ったのかを言語化し、共有できる形にしておくと、認識のズレが生まれにくくなります。質問された後に答えるような事後対応ではなく、事前にプロセスを整理して伝え、判断基準や対応方法を示すことが求められているのです。

photo 事前にプロセスを整理して伝え、判断基準や対応方法を示すことが求められている

事前対応力がAI活用の成否を決める

 AI活用が進まない要因として「マネジャー自身が忙しくて使えていない」という声がよく聞かれます。しかし、その忙しさは、事前対応の不足によって生まれているケースが少なくありません。事前にプロセスや判断基準を整理できていなければ、トラブルや手戻りが発生しやすくなり、結果としてAI活用に回す余力も失われてしまいます。

 一方で、忙しくない状態をつくれるマネジャーは、日頃から事前対応を徹底しており、生成AIもうまく活用することができます。つまり、メンバーのマネジメントにおいても、AI活用においても、成果を高めるためには「ローコンテクスト化」が重要なのです。

 今回はマネジャーへの期待を整理しましたが、同時に企業の人事・IT部門やサービス提供者にも注力すべき点があります。後編では、AIがどのようにマネジャーを支えていくのかについて解説していきます。

著者紹介:藤田理孝(ふじた まさたか)

株式会社リンクアンドモチベーション プロダクトマネジャー

東京大学経済学部卒業後、

新卒でリンクアンドモチベーションに入社。

採用・育成・制度・風土などのテーマに横断的に取り組み、顧客の組織変革を推進するコンサルタントとして活躍。

2021年にプロダクトマネジャーに転向し、現在はクラウド事業全体の戦略策定・開発推進を担っている。

【イベント情報】生成AI活用によるDX推進の本質

生成AIの普及が急速に進む中で、業務変革や事業成長に活かすことは難しいという声を耳にすることが多くなりました。企業のDX化のカギは、経営と現場の両輪で取り組むことです。オムロンでは現場の内発的動機を経営のエンパワーメントによって昇華させ、実践的な生成AI活用のプロジェクトを全社横断で推し進めています。“オムロン流”の生成AI活用の取り組みについて解説します。

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