牛角はなぜ「焼肉食堂」を増やすのか フードコートで焼肉が日常になる、2つの背景(2/4 ページ)

» 2026年01月25日 08時00分 公開
[谷頭和希ITmedia]

2つに分かれる焼肉チェーンのあり方

 牛角が「気軽な焼肉」を目指す背景には、焼肉業界をめぐる状況がある。

 焼肉は、物価高の局面で「割が合いにくくなる」外食の一つだ。東京商工リサーチによると、2025年は焼肉店倒産が59件で過去最高を更新した。前年の45件から30%以上も増加し、外食産業の中でも苦境にある。東京商工リサーチは、その原因として原材料高を指摘している。

2025年「焼肉店」の倒産 59件で過去(出典:東京商工リサーチ)

 肉の原価が上がるだけではない。人件費も上昇している。特にフルサービスの焼肉店の場合、人件費や設備費などがかかり、客席・換気・清掃といった「肉以外」のコストも大きい。つまり、店を維持するための固定費が全体として上がっている。

 その結果として、特に焼肉チェーンは2つの方向に割れているのだ。

 1つは、工夫を重ね、焼肉を「ある程度特別感のある食事」として守る方向だ。例えば、「焼肉きんぐ」(運営:物語コーポレーション)。食べ放題を基本として郊外に多く立地し、週末にはファミリー層が多く訪れる。物価高の時代、外食の怖さは「いくらになるか分からない」点にある。食べ放題は、その不安を最初に消せる。家族連れならなおさらだ。その意味でも食べ放題は強い。

 物語コーポレーションの2025年6月期決算を見ると、「焼肉きんぐ」は同期に27店舗を出店し、351店舗となった。売上高は616億円で、前年比11%増、物語コーポレーション全体の売上高の約半分を占めている。 焼肉を「ハレの日の食事」として成立させ、規模を伸ばしているわけだ。

「焼肉きんぐ」は351店舗に(出典:物語コーポレーション)

 もう1つの方向が、焼肉を「日常に降ろす」方向だ。商品単価を下げて来店頻度を高め、結果として焼肉店で使われる金額の総量を増やす。これを実現するためにフルサービスをやめ、作業工程を標準化したり、客の回転速度を上げたりする。

 代表的な店には「焼肉ライク」があるだろう。「ひとり焼肉」というスタイルを生み出し、極限まで運営コストを抑え、それをなるべく価格に反映させる。

 要するに、物価高の時代、焼肉業界は2つに分かれている。1つは、イベントとしての焼肉を守ること。もう1つは、日常としての焼肉を訴求することだ。

 そして、いま話題にしている「牛角焼肉定食」は、後者の選択肢を取っている。

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