丹羽氏は「DXの必要性は以前から感じていたものの、ナニワでは長らく具体的な一歩を踏み出せずにいました」と話す。
帳票をExcelに置き換えるペーパーレスツールを検討したこともあったが、紙に記載していた内容をそのままExcelに入力するだけで、現場の作業体験が劇的に改善されるわけではなかった。むしろ慣れている紙での作業からExcelに変わることで、現場の負担が増える可能性を懸念し、導入を見送った。
転機となったのは、2023年10月。杉本氏が工場長に就任し、経営に参画する立場になったことだった。同氏は、製造現場と品質保証部を経験しており、人一倍、現在のアナログな帳票管理などに課題感を持っていた。現場と経営の両方を俯瞰(ふかん)できる立場から「このままでは品質も生産性も頭打ちになる」と感じ、現場のDXに乗り出した。
DX推進プロジェクトを立ち上げ、メンバーは杉本氏自身が声をかけて集めた。メンバーの選定基準には「デジタルに強い」といった専門性は求めなかった。同氏が重視したのは「人をワクワクさせることに喜びを感じられるかどうか」だ。相手を楽にしたい、喜ばせたいという感性を持つ人材こそが、現場の課題を自分事として受け取り、動かせると考えた。
そして、DXを実現するためのパートナーに選んだのが「カミナシ」だ。工場などの現場業務をデジタル化するクラウドサービスを提供している。2022年9月の展示会で出会い、導入を検討していたが、条件やタイミングが合わず、それまでは導入に踏み切れていなかった。杉本氏が工場長に就任したタイミングでDX推進プロジェクトを立案し、デジタル帳票ツール「カミナシ レポート」を導入した。
メンバーもツールもそろった。すぐに現場の改善に乗り出すこともできるが、まずDX推進プロジェクトが取り組んだのは、現場に向けた「傾聴スキルを学ぶオンラインセミナーの実施」だった。
現場から生まれた提案や意見を、否定せずに受け止める土壌づくりのための取り組みだ。否定せずに話を聞いたり、相手の立場を想像したりする姿勢がなければ、改善もDXも加速しないと考えていたからだ。
こうして、現場の声を改善につなげる体制を整えた上で、本格的な現場DXへと踏み出した。
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