実際、全国に先駆け「カスハラ防止条例」を成立し、2025年4月に施行した東京都の調査でも、リテラシーの重要性が指摘されています。
「カスタマーハラスメント対策として、行政にどのようなことを望みますか」との問いに、「カスハラ防止条例の認知度向上」が 36.3%で最も多く、次いで「カスハラ防止策の普及啓発」が27.6%、「企業のカスハラ防止対策の支援」が20.7%となっていたのです。
さらに、この調査では興味深いリアルも浮き彫りになりました。
「あなたは、カスタマーハラスメント(カスハラ)という言葉を聞いたことがありますか」との問いに、経験値の少なさから被害者リスクの高い、若い世代ほど認知度が低いことが分かりました。30歳以上では、認知度(「言葉も意味も知っている」「言葉は聞いたことがあり、意味もなんとなく知っている」の計)が80%以上だったのに対し、20代の4人に1人が「言葉を聞いたこともない」「言葉は聞いたことあるが、意味は知らない」と回答したのです。
「カスハラ」のような新しい言葉が生まれるのは、その言葉がよく当てはまる問題があっちこっちで起こり、何らかの共通ワードが求められるからにほかなりません。「助けて!」とSOSを出したいのに、「そこに何もない」かのごとく無視され、「仕方がない」と諦めたり、泣き寝入りしたりしていた人たちを、共通ワードがあれば救うことができます。
20代の4人に1人しか「カスハラ」を知らないという現実を、国や企業は重く受け止めるべきです。国は実効性ある周知を、企業は「客より社員を守る」仕組みを。そして管理職は、部下の我慢を「スキル不足」と片付けず、違和感があればすぐ割って入る。その「一歩前に出る勇気」を持ってください。
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)、『働かないニッポン』 (日経プレミアシリーズ) 、『伝えてスッキリ! 魔法の言葉』(きずな出版)など。
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