ただし、よく考えると多くの人はすでに似た体験をしている。Apple Payだ。1台のiPhoneに複数のカードを登録し、支払い前にどれを使うか選ぶ。カードと物理的な「モノ」の1対1の関係はすでに崩れているが、多くの人が違和感なく使っている。
理由はシンプルで、選んだカードがそのまま使われるからだ。Suicaを選べばSuicaとして引かれ、三井住友のクレジットを選べばその請求が来る。選択と結果が一致する。Oliveで起きた問題は、まさにこの一致が崩れる場面があったことに尽きる。アプリで「クレジット」を選んだはずなのに、裏側ではデビットとして処理される。その不透明さが、不信感につながった。
PayPayがFlexible Credentialで同じ轍を踏まないためには、Apple Payが当たり前のように実現している「選んだ通りに動く」という信頼を、まず担保する必要がある。その上で、Visaはさらに一歩先を目指そうとしている。
2月の説明会で、米Visaのジャック・フォレステル最高製品・戦略責任者が示したスライドに、その先の姿が見えた。画面には「Smart Rules」と書かれ、「50ドル以下はウォレット残高で支払う」「50ドル以上はクレジットで支払う」というルール設定が並んでいた。
PayPayカード(クレジット)、PayPay残高カード(プリペイド)、PayPay銀行デビットの3枚を、1つのVisaクレデンシャルに統合し、年内の国内提供を目指す。PayPayの中山一郎社長は、この構想を説明会で明らかにしている。
日本での具体的な仕様は、まだ明らかになっていない。だが、もしSmart Rulesのような自動振り分けが実現すれば、これまでとは違う利用体験が生まれる。普段の少額決済はチャージ残高から引き落とし、一定額を超えたらクレジットの後払いに回す。ユーザーはルールを一度設定すれば、レジ前で何も考えなくていい。レジ前での判断を仕組みに委ねるという発想である。
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