堀氏は「AI活用でもうけることを目指しつつ、AIを利用したり利用されたりする契約やルールをどう設計するかが重要。国なども巻き込みながら『出版秩序』を作っていく必要がある」と強調する。
もっとも、GoogleやOpenAIのような巨大テック企業を相手に、個々のクリエイターや中小出版社が単独で交渉するのは簡単ではない。交渉力や情報量の差が大きく、自社コンテンツが利用されても十分な対価を得られないとの懸念は根強い。
一方で、AIもまた新たな一次情報がなければ進化できない。まだ世の中に存在していない事実を発見し、取材や調査を通じて社会に提示する役割は、現時点では人間によるメディアに依拠しているからだ。
堀氏は「メディアがAI企業と契約し、同じエコシステムの中で役割を担うことは非常に重要だ。未知の事実を発掘し続けることは、現段階のAIにはできない。だからこそ、メディアが参加すべきだ」と説明する。
今後の展望については「コンテンツ企業にとって、今年は面白い年になる。これまでは力関係の差から、中小出版社が交渉の場に立てず、AI企業による収益減少を受け入れざるを得なかった場面もあった。しかし今後は、一定のルール整備が進み、各社の取り組みもオープンになることで、交渉の土俵に上がれるようになる」と話した。
足元では、出版業界の調査機関である出版科学研究所(東京都新宿区)が発表した「出版指標」によると、2025年の紙の出版市場は前年比4.1%減の9647億円と、1976年以来初めて1兆円を下回った。
「書籍」は微増したものの、「雑誌」は休刊が相次ぎ、2020年比で33.5%減と大きく落ち込んだ。「週刊誌」では、書店から出版社への返品率が初めて5割を超え、従来のビジネスモデルが限界に近づいている実態が浮き彫りになった。
電子書籍市場では、これまで成長をけん引してきた「電子コミック」の伸びが鈍化。成長率は2.9ポイント増にとどまり、価格競争やポイント還元策の激化が影響しているとみられる。
堀氏は「コロナ禍での特需が終わり、コンテンツ市場は踊り場に来ている」と指摘する。
AIを一方的な脅威と見なすのか、それとも秩序づくりに主体的に関与し、新たな価値を再定義していくのか。メディアの覚悟が問われている。
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